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第3回
建設発生土について②

2013/08/20

建設発生土の利用促進について

建設発生土を活用した越谷レイクタウン(埼玉県)(UCR資料より)

建設発生土を活用した越谷レイクタウン(埼玉県)
UCR資料より

回は国土交通省による建設発生土の定義や建設副産物実態調査の結果を見ながら、建設発生土とは他の建設副産物と異なりそのまま利活用できる資源であること。しかし工事現場から搬出される量が膨大で、しかも搬出側とそれを受け入れ利用する側との間に時期や品質に関するミスマッチがあるために放置や新材利用が依然多い現状を述べてきました。

今回は、首都圏で搬出される建設発生土を広域利用するために様々な事業を行っている(株)建設資源広域利用センター(以下「UCR」)のデータを見ながら、建設発生土の搬出側と受け入れ利用する側とのミスマッチとは具体的にどういうものか。また広域利用を促進してゆく上で監理技術者が配慮すべき事項について述べたいと思います。

図表1は、平成10~24年度までの15年間にUCRが取り扱った建設発生土受入事業別の推移です。これを見ると、平成10年度には取扱量全体の8割に当たる140万㎥の建設発生土が河川堤防や団地造成等都市基盤整備に活用されていましたが、昨年度は都市基盤整備に利用された発生土は約三分の一の50万㎥に減少し、代わって採石場跡地等内陸受入地での利用が増加していることが分かります。その背景には、もちろん近年の建設投資の大幅な減少による公共事業量の縮小があると思われますが、搬出側と受け入れ利用する側との時期、品質に関するニーズのミスマッチも依然として大きく影響していると考えられます。

図表1. 受入事業別搬入実績推移 出典:UCR資料図表1. 受入事業別搬入実績推移
出典:UCR資料

例えば図表2は、平成24年度にUCRの斡旋で建設発生土を受け入れ利用した事業地のうち、受入期間を公表している38箇所の事業地について受入期間と建設発生土の受入実績との関係を見たものです。同じ受入期間の事業地の間でもその実績には大きなバラツキがありますが、受入期間が長い事業地ほど受入実績が増加する傾向にあることが分かります。さらに、常時受け入れている事業地の都心(ここでは便宜的に東京都庁としました。)からの距離と建設発生土の受入実績との関係を示したのが、図表3です。こちらも都心からの距離が同程度の事業地の間でも受入実績に大きなバラツキはありますが、都心に近い事業地程実績が大きい傾向が見えると思います。

  • 図表2. 受入期間と年間受入実績出典:UCR資料図表2. 受入期間と年間受入実績
    出典:UCR資料
  • 図表3.常時受入可能な事業地の都心(都庁)からの距離と年間受入実績 出典:UCR資料図表3.常時受入可能な事業地の都心(都庁)からの距離と年間受入実績
    出典:UCR資料

すなわち、搬出側の工事工程やコストに影響を及ぼす建設発生土の受入期間の長短や工事現場から受入事業地までの運搬距離は、搬出側事業者が受入事業地を選択する際の重要な決定要因なのです。一方で受け入れ利用する側にとって、建設発生土は貴重な原材料です。したがって搬入される時期と共に、搬入される建設発生土の品質が重要な受け入れ承諾の決定要因となるのです。このように建設発生土の搬出側と受け入れ利用する側のニーズは異なるという点を踏まえて搬出側の工事を担当する監理技術者の皆さんに留意して頂きたい事項を次に述べたいと思います。

建設発生土搬出に当たっての留意事項について

図表4.UCR事業の手続きの流れ 出典:UCR資料図表4.UCR事業の手続きの流れ
出典:UCR資料

表4は、建設発生土を搬出する側の発注者並びに工事請負者の方々がUCRを利用する場合の手続きの流れを示したものです。現在公共工事では、発注者が建設発生土の搬出先を指定することが原則です。一方で指定された搬出先(すなわち受入事業地)は、先程述べたように搬入予定の建設発生土の搬入時期や土質・地質条件など品質に関連した項目に強い関心を持っています。このため、受入事業地側は個別に自らが必要とする土質試験や地質分析の試験要求項目など受入条件を設けています。したがって搬出側工事の監理技術者は、指定された受入事業地が求めている建設発生土の土質・地質試験を実施し、その受入条件に搬出予定の建設発生土が適合していることを確認することが何より先ず必要です。

ところで実際に受入事業地が求める試験や書類の準備に搬出側工事の請負者はどの程度の日数を要しているのでしょうか。昨年度UCRに搬入申込みのあった工事案件で見てみると、請負工事契約日からUCRへの搬入申請日までに要した平均日数は約120日。全体の6割近くの請負者は90日以内でした。条件を事前確認し、試験や書類の準備を効率的に行うことが重要です。

次に建設発生土の土質・地質を確認し、搬入を申込んだ後も実際に発生土を搬出できるようになるまでには行政上の手続きが必要となります。近年多くの地方自治体が土砂条例などを定め、土砂の搬出者や受け入れ利用する事業者に所用の手続きを求めています。図表4には首都圏の地方自治体における標準的な手続期間を示していますが、工事内容によっては更に手続きの項目が増えるので、受入事業地が在る地方自治体の関連規則を調べ、事前に準備しておくことも大切です。

三点目は、行政手続きも完了し、いよいよ土砂搬出を開始する段階でも注意すべき事項があります。それは、受入事業地周辺の環境によっては、事業地へのアクセス道路でダンプトラックの通行を制限している場合や一日の受入可能量を独自に定めている場合があるという点です。通行条件によっては、当初計画通りに建設発生土を搬出できず搬出側の工事工程や搬出できる量が限られてしまうケースもあります。できる限り計画的に搬出できるよう受入事業地の管理者と十分な事前調整が必要です。

最後に、搬出中に受入事業地が示していた受入条件に適合しない異物が建設発生土に混入している場合や、搬入している建設発生土の土質が途中から変化した場合などでは、搬入を拒否された上、搬入済土砂の撤去さえ求められるケースも発生します。例えば受入可能な土砂の最大粒径が定められている場合や、第4種建設発生土や改良土は受け入れ不可の条件を設けている受入事業地が比較的多いことに注意が必要です。搬出に際しては、他の建設廃棄物が混入しないよう分別を徹底すると共に、搬出を予定している工事現場に土質の異なる複数の地層があることが事前に分かっている場合は、発生土を受入条件に合った受入事業地に割り振れるよう事前に調整することも重要となります。

この他にも建設発生土に関しては様々な課題があります。例えば土壌汚染対策法基準を超過した土や水分が多く含まれる第4種建設発生土や泥土の処分問題など、その処理に頭を悩ませている監理技術者の方々も多いのではないでしょうか。ここではそのような課題について述べる余裕がありませんが、いずれにしても関係者が力を合わせて建設発生土の適正な利活用を進めていく必要があります。

寄稿

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