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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設中(コンクリートの特性とクラック)

目地を跨ぐ金物によるクラックに注意

2015/06/29

工事の概要とトラブルの内容

用して初めての冬を迎えるコンクリート橋に関し、発注者から「防護柵の支柱の付け根のコンクリートが剥離している。」という連絡があり、現地に駆けつけてみると地覆の伸縮目地のすぐ脇の支柱の根元でコンクリートが破壊していて、同様の現象が同じ条件の場所で4箇所確認された。

コンクリート橋の仕様は4径間で支間長39.7m×4、橋長約160mであり、防護柵は鉄製で、支柱間隔は3mである(図1、図2)。問題の支柱は地覆部のコンクリートに埋め込まれている。

  • 図1 防護柵の状況図1 防護柵の状況
  • 図2 防護柵と伸縮目地図2 防護柵と伸縮目地

原因と対処方法

原因はコンクリートの伸縮目地を跨いでいる防護柵が、コンクリートの伸縮を拘束したため、コンクリートが破壊したものと推察された。この原因を力学的に説明すると以下のようになる。

コンクリートの熱膨張係数(線膨張率)は10×10−6(1/°C)であるので、長さ40mのコンクリート床版が40°Cの温度変化を受けると伸縮量は 10×10−6×40m×40℃=0.016m=16mmとなる註)。これに対し、支柱間隔3mの防護柵の伸縮量は1.4mmである(表1)。このため、コンクリート床橋の目地の伸縮量と目地を跨いだ柵の間において、伸縮量に14.6mmの差が生じる。

表1 伸縮量の比較

熱膨張係数α
(1/°C)
長さL
(m)
温度変化ΔT
(°C)
伸縮量ΔL
(mm)
コンクリート橋(4径間) 10×10−6 * 40 40 16
防護柵(鉄製) 11.8×10−6 ** 3 40 1.4

図3 ビームに長穴を開けた状況図3 ビームに長穴を開けた状況

今回使用された防護柵の構造は支柱から突起が出ていて、それにビームを被せる構造になっていた。そこで、ビームを固定していたボルトを切断して取り除き、ビームに長穴を開け新しくボルトを設置し、スライドを可能にした。写真を見るとわかるように、それでも万全ではなく、その後接続のボルトを外している(図3)。

同様の失敗をしないための事前検討・準備

図4 設計例図4 設計例

鉄筋コンクリート製の剛性防護柵(壁高欄)では伸縮目地を考慮した設計を行うのが常識であるが、金物防護柵の場合には、伸縮目地の検討を見落としているケースがかなり見受けられる。防護柵に金物を使う場合、設計者の意識の中で二次製品的扱いとなって、桁や床版と比較して十分な配慮がなされないことがあるように思われる。

施工者は、このような視点から設計図を疑ってみることも必要である。目地の両側に支柱を設置する(図4)とか、ビームにスリーブが組み込まれ、伸縮変位を吸収できる構造の防護柵になっていなければならない。

 *【2002年制定】コンクリート標準示方書〔構造性能照査編〕土木学会3.2.7熱特性
**理科年表 平成27年版
註) ΔL=α・L・ΔT  ここで ΔL:伸縮量(m)、L:長さ(m)

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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