
基礎工事
基礎工事
4)新工法・その他
2025/11/04
今回は、硬質な中硬岩層を含む傾斜した地層において、ニューマチックケーソンの沈設に先立って行った事前対策により、ケーソンの傾斜を防止した事例について述べる。
橋梁下部工の工事において、橋脚3基が計画され、そのうち1基はニューマチックケーソン基礎であった。ケーソンの仕様は、幅10.0m×長さ10.0m、高さH=5.0mの矩形、橋脚高さはH=20.0mである。
設計に先立って実施された地質調査では、橋脚の中心で1箇所のボーリング調査が行われていた。橋脚の施工箇所の地層は、GL0.0m~-3.0m:砂質土層(N=0~2)、GL-3.0m~-7.5m:礫質土層(N=10~30)、GL-7.5m~:中硬岩層(N>50)で構成され、地下水位はGL-2.5mであった。
橋梁下部工の施工箇所は海岸の近くに位置し、現地盤には10~15%の勾配があったため、ケーソンの施工基面における軟弱な砂質土層、ケーソンの支持層となる中硬岩層にも傾斜があることが設計の段階でも懸念が示されていた。施工計画の検討にあたり、ボーリング1箇所では地層の傾斜が判別できないため、施工に先立ってケーソンの四隅で追加ボーリングを実施することとなった。
この結果、中硬岩層は橋梁下部工の橋軸直角方向で約20%、橋軸方向で約15%の勾配が確認された。このため、ケーソンの隅角部において、中硬岩層は橋軸方向で約2.0m、橋軸直角方向で約1.5mの高低差があることが追加ボーリングで明らかになった(図-1)。
ケーソンの施工箇所における地層の傾斜が確認されたことにより、以下の事項がケーソンの施工上の課題として考えられた。
①施工基面の砂質土層の層厚の相違により、ケーソン刃口部の支持力が不均一となり、沈設の初期段階においてケーソンに傾斜が発生する。
                ②ケーソン沈設時、刃口部の中硬岩層の高低差により、ケーソンに傾斜が発生する。
                これらの施工上の課題に対し、ケーソンの傾斜を防止するための事前対策を検討した。
              
ケーソンの傾斜を防止するため、以下の事前対策を行った。
①ケーソン沈設の初期段階における傾斜を防止するため、施工基面の砂質土層は全て切込砕石で置換を行い、刃口部における支持力を均一に確保した。置換掘削時は排水ポンプによる水替えを行い、砕石の転圧を十分に行った。
②ケーソンの全外周において、硬質な中硬岩を削孔可能なダウンザホールハンマによる先行削孔を行った。ダウンザホールハンマは外径φ630mmを使用してケーソン刃口部を中心として削孔し、削孔深はケーソンの設置高までとした(図-2)。
以上の対策により、①ケーソン沈設の初期段階における傾斜の防止、②硬質な中硬岩層の傾斜による影響を低減し、中硬岩層におけるケーソン沈設時の傾斜を防止した。以上の対策の実施により、ケーソンを所定の管理基準値内で沈設することができた。
海岸や河川付近のほか、地層の傾斜が懸念される場合は、1箇所のボーリング調査のみでは判断が困難であるため、施工段階で追加のボーリング調査を行って地層の傾斜を把握し、ケーソンの沈設計画を行うことが望ましい。
施工の段階で地層ごとに土質定数のばらつきが大きいことが明らかになった場合や硬質な中硬岩等を支持層とする場合は、地層に傾斜がある条件ではケーソンの沈設精度の確保が難しく、ケーソンの傾斜や偏心が発生する可能性があるため、ケーソンの刃口部における地層構成を十分に把握したうえで事前対策を検討する。
事前対策として、今回のダウンザホールハンマによる全外周の先行削孔を行う方法の他、ケーソンの支持層の土質や勾配によっては、全周回転掘削機を使用して砕石置換を行う方法、先行削孔を1本おきに行う方法、先行削孔を硬質層の範囲のみで行う方法等、様々な方法が考えられるため、地盤の条件に応じて適切な事前対策を検討することがケーソンの沈設精度確保のために必要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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