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2026/01/05
ICT活用工事とは、国土交通省が推進するi−constructionにおける取り組みの一環として、建設現場における測量、設計、施工、検査といった一連のプロセスで、情報通信技術(ICT)を全面的に活用する工事のことです。
ICT活用工事は、平成28年度に土工を対象として始まり、その後、舗装工・浚渫工や地盤改良工・法面工等が対象となり、令和3年度以降、構造物工として橋台・橋脚、橋梁上部工とともに、基礎工にも適用工種が拡大されています(図−1)。
当コラムでは、基礎工におけるICT工事の現状と現在導入されている技術等について紹介したいと思います。
ICT活用工事(基礎工)では現在、既製杭工、矢板工、場所打ち杭工、鋼管ソイルセメント杭が対象とされています。また、「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」 2)では、以下の工法が示されています。
振動・打撃による工法は対象外ですが、杭工事のほぼ全ての工種が対象となっています。出来形管理項目としては、基準高、偏心量、変位、傾斜、杭径等が対象であり、根入長等は対象外となっています。出来形管理要領に示された適用工種区分のうち、土木工事共通編の例を表−1に示します。出来形管理要領には土木工事共通編の他、河川偏、河川海岸編、砂防編、道路編における基礎工の適用工事・適用範囲が示されています。
また、ICT活用工事(基礎工)では、他の工種と同様、①3次元起工測量、②3次元設計データ作成、④3次元出来形管理等の施工管理、⑤3次元データの納品を行うとされています。③ICT建設機械による施工は、土工や地盤改良工における3次元マシンガイダンス(MG)、3次元マシンコントロール(MC)建設機械による施工のことで、杭においても実用化されている技術がありますが、現時点では「該当無し」とされています。
基礎工におけるICT技術は、「杭の調査技術及び施工管理技術の体系化」3)で詳細に説明されています。この調査では、基礎工におけるICT技術を①地盤調査技術、②杭芯位置・建込精度管理技術、③杭打設管理技術に分類しています。
杭には多くの工法があり、それぞれの工法によって必要とされる管理項目が異なるため、各工法に特化したシステムが多いのが特徴です。詳細は前述の「杭の調査技術及び施工管理技術の体系化」を参照していただくこととして、今回のコラムでは、②杭芯位置・建込精度管理技術について説明したいと思います。
杭芯位置・建込精度管理技術は、GNSS、TS(デジタルカメラ内蔵型TS、自動追尾、ノンプリズム等)、傾斜計やセンサ等を用いて杭芯位置や杭の偏心、傾斜等の建込精度の管理に使用するシステムです。従来はTSを2台使用するシステムが主流でしたが、最近では1台のTSで管理できるシステムが多く、計測データをクラウドで管理できるシステムもあります。多くの技術が適用可能な杭工法を限定せず、様々な工法に対して適用が可能とされています。計測機器の種類や測定方法、適した対象工法があるため、杭の工法や施工条件に応じて選定します。現在NETISに登録されている技術の例を表-2に示します。各システムの詳細はそれぞれのwebページをご確認ください。
表−2 NETIS掲載の杭芯位置・建込精度管理技術の例4)
杭の3次元出来形管理の測定項目として、杭の基準高、変位ℓ、偏心量d、傾斜、杭径Dが対象となっていることは前述の通りです。「3次元計測技術を用いた出来形管理の監督・検査要領(基礎工編)(案)」 5)によると、杭と矢板工について以下の3次元計測技術に関する内容が記述されています。
3次元計測技術を用いた杭の出来形管理を行うため、基準となる基礎工設計データ作成ソフトウェアにより、基礎工設計データを作成します。基礎工設計データは、設計図書等に基づき、杭番号と杭芯位置(x,y)、杭天端の標高または施工基面からの計画深度、杭径d、施工基面の標高を入力します。
杭の出来形測定方法には、単点計測技術と多点計測技術があります。単点計測技術とは、TS(等光波方式、ノンプリズム方式)、RTK-GNSSのように、特定の1点のみの座標や角度、距離といった位置情報を3次元で計測する技術です。多点計測技術とは、空中写真測量(無人航空機)、レーザースキャナ(地上型、無人航空機搭載型、地上移動体搭載型)等があり、広範囲で連続的な3次元データ(点群データ)を計測する技術です。単点計測はピンポイントで高精度な計測が可能であり、多点計測は広範囲を面的に短時間で計測ができる、といった特徴があります。
計測方法として、場所打ち杭工、矢板工、既製杭工・鋼管矢板基礎工について記載されていますが、ここでは場所打ち杭の出来形計測の例を説明します。
単点計測技術を用いる場合、杭の断面または測線上で計測項目の端部等の3次元座標を計測します。杭径は、測線を縦断方向とそれに直交する横断方向に設定し、それぞれの測線の端点における3次元座標から縦断方向の杭径(L1)、横断方向の杭径(L2)を算出します。基準高は杭天端面の中心付近で4点の標高を計測し、この平均値と設計標高との差を基準高とします。偏心量は杭径を計測した縦断方向、横断方向の測線の交点(x,y)をCAD等で算出し、設計杭芯に対する差から偏心量を求めます(図-2)。
多点計測技術を用いる場合、算出方法①と算出方法②が示されています。算出方法①は、取得した計測点群の表示画面上に縦断方向・直交する横断方向に測線を設け、座標値を設定します。
また、杭の天端高は中央付近の4点以上を点群から抽出し、この高さの平均値を高さの計測値として基準高を算出します(図-3)。
算出方法②は、計測点群をCADで平面表示し、杭外周における任意の3点から杭径と杭芯位置を算出する方法です。
従来はレベルやスケール等で行っていた出来形計測をTSやレーザースキャナといった方法で得られた3次元座標で行うこととされています。
上記の方法で計測した杭芯の位置や偏心量、杭径、天端高等の出来形計測データをまとめ、出来形管理資料を作成します。基礎工設計データと比較して管理基準値を満足していることを確認するのは従来の出来形管理方法と同様です。上記以外の管理項目、例えば杭の根入れ長等については従来の管理手法で行うこととされています。
こうしたICT基礎工における各種技術が実用化される以前は、杭芯の位置合わせや杭の削孔・建込み時、トランシットや下げ振りで杭やケーシングの傾斜を2方向から視準し、杭打ち機のオペレータに無線連絡を行う等の施工管理を行い、品質管理、出来形管理も含めると非常に労力が必要とされた作業でした。筆者もかつてはレベルやスケール、トランシットといったアナログ的な方法で膨大な数の出来形計測を行ってきましたが、こうした方法が実用化され、運用されている状況を見ると、隔世の感があります。
ICT基礎工の技術の適用により、杭の施工管理を大幅に効率化・省力化するとともに、杭芯の位置や杭の偏心、傾斜等の杭の出来形精度を向上させることができます。また、今回は紹介できなかった「地盤調査技術」と併用することで、基礎工における施工管理をさらに高度化することができます。
杭の施工管理・品質管理は管理項目が非常に多く、いずれの管理項目も重要です。今回紹介したシステムを有効活用し、施工管理の効率化、省力化を図り、杭の施工に必要な管理を確実に行うことで、杭の確実な施工と品質の向上に繋がるものと考えます。
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コラム
建設ディレクター
今月の一冊
2026/01/05
約20年間、建築工事の現場監督として、全国の現場で延べ10万人以上の職人と苦楽を共にしてきた著者。日々目まぐるしく変わる現場環境で、リーダーとして成長する姿が生き生きと...
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