ConCom 掲示板

こんなときはどうしよう? 今さら聞けないこんなこと これって正しいの?

建設現場で直面する課題、日ごろの作業の疑問、資格試験の相談など。みなさんで盛り上げてください。

掲示板を見る

お役立ちリンク集 日々の作業で使える情報へ一発リンク

現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第3回 仮設工事

2015/02/26

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

事監理の役割は「工事と設計図書の照合及び確認」ですが、設計図書の配置と設計GLを現地で確認することは、最も重要な工事監理の1つになっています。特に設計図書と現地に差異があった場合には、現地で位置を決定しなければなりません。建築基準法を満たすだけでなく、隣地や道路との関係、敷地の高低差、排水勾配など、総合的に判断しなければなりません。

建設業者は現地にて、敷地境界線からの建物の位置を出し、設計GL及び建物のレベルを決め、工事監理者から承認をもらい着工します。杭工事や根切工事が始まってから位置の修正は困難になります。また、工事中に定めた墨が移動してしまう危険があるので、再確認ができるように逃げ墨を設定します。工事監理者も逃げ墨が正しく設定できたか確認しておくようにします。

1.敷地の状況及び縄張り

① 敷地の状況、建築物等の位置

解体工事がある場合には、解体が終わり更地になった状況で建物の配置を出します。この段階ではミリ単位の精度は求めずに、ひもや糸を使って建物の輪郭を示します。設計図書とおりに配置されているか、近隣や道路付きなどを見て、配置上の問題がないか確認します。

縄張りは「地縄」ともいい、もともとは縄を張って建物の配置を示したところからきています。縄張りは自分の領分を示す言葉にも使われています。

縄張りは、鉄筋や木杭を地面に打ち込み、ビニールひもや水糸を張って、建物の輪郭を示し、敷地との関係を確認します。

相隣関係の民法の規定は、工事監理者として理解しておくことが必要です。隣地からの離れについては民法で50cm以上の距離が定められています。ただし、防火区域の耐火建築物のように、境界ぎりぎりまで建築が認められている地区もあり、慣習に従うという条文もあります。

隣地へのプライバシーの配慮についても民法に定めがあり、他人の宅地を見通すことができる窓やバルコニーについて、1メートル未満の距離においては目隠しが求められています。ただし、マンションのように高層になって、上方から角度的に覗けない状況であれば目隠しは必要ありません。不透明なガラスを使った場合は、引き戸では開ければ覗けるので不可で、固定式のフィックス窓であれば可です。

①	敷地の状況、建築物等の位置

地縄を工事監理者と施工業者で確認しています。

地縄を工事監理者と施工業者で確認しています。

境界から地縄までの距離を確認しています。

境界から地縄までの距離を確認しています。

② 境界石の位置

施工者が境界を間違えないように、工事監理者は現地で境界石を一緒に確認します。境界石によって敷地が確 定していることが必要です。境界石はさまざまの形状があり、次にそのいくつかを例示します。

矢印で位置を示している

矢印で位置を示している

鋲で位置を示している

鋲で位置を示している

十字の中央が境界の位置

十字の中央が境界の位置

プレートを張って位置を示している

プレートを張って位置を示している

境界石の確認は設計段階で実施し、確認申請時には敷地面積を確定しています。しかし、境界石が不明なまま暫定的に進めてしまった場合には、施工段階で境界査定が必要になる場合もあります。

境界石の位置は財産に係ることなので、土地家屋調査士などの第三者に依頼し、権利関係者の立会い、了解のもとに境界石を入れる必要があります。境界が確定することで、地積測量図が作成でき法務局に登録できます。

なお、権利者の了解をとらずに境界石を勝手に移動したりすると、刑法上の違反になります。

② 境界石の位置

③ 隣地との高低差

隣地との敷地関係を確認します。高低差がある場合には、その納め方を検討しておきます。また、雨水は低い方へ流れていきますので、隣地へ迷惑をかけないような配慮が必要です。

③ 隣地との高低差

2.ベンチマーク

① 設計GLと現地の照合

斜線制限に合わせて、建物をセットバック(斜めに後退)しています

斜線制限に合わせて、建物をセットバック(斜めに後退)しています

敷地のレベル測量の結果から、設計図書で設計GLが定められています。工事監理者は施工者と一緒に、現地で設計GLの位置を確認します。設計GLと建物の1階床レベルの関係は、道路からのアプローチの高低差、建物からの排水勾配などに関係しますので、問題がないことを現地で確認し、工事監理者が承認します。

また、建築基準法上の斜線制限や高さ制限がぎりぎりの設計では、設計GLと建物の1階床レベル差を大きくするなどの変更をした場合に法的確認が必要です。

断面図

ぎりぎりの設計の場合に、配置やレベルの移動で斜線制限にかかってしまうと、法的にアウトになってしまいます。

② ベンチマークの設置状態、位置

設計GLは道路境界の縁石上や道路上などに設定されますが、そのようなものは工事中に動いたり壊れたりする可能性があります。そこでレベル墨や通り芯墨の適正が確認できるように、動かない場所にベンチマークを設定します。

ベンチマークはレベル墨の場合には、動かない電柱やビルの基礎などに印をつけて、確認が必要な場合に使います。あまり大きく墨付けすると、クレームにつながるので注意が必要です。

工事監理者、施工者でベンチマークを確認しています。

工事監理者、施工者でベンチマークを確認しています。

マンホールの中央を設計GL-300としました。

マンホールの中央を設計GL-300としました。

ベンチマークを、動かない電柱に移しました。

ベンチマークを、動かない電柱に移しました。

設計GL+1300のレベル墨を確認しました。

設計GL+1300のレベル墨を確認しました。

③ 遣方(やりかた)

遣方は、現地に建築物を建てるために、ミリ単位の精度で位置を出します。隣地境界線からの離れも、正確な寸法が出ます。設計図書の配置図の寸法を確認します。工事監理者の承認で建物の配置が確定し、その位置に建物が造られますので、この段階で問題がないように慎重に確認しなければなりません。

遣方の通り芯の墨についても、掘削工事などで不明にならないように、逃げ墨を出しておきます。道路に鋲を打ったり、不動なものに印を付けたりします。そのようなものがない場合には、杭を打って釘で位置を示し周りを囲って保護したりします。

工事監理者と建設業者で遣方の確認をしています。

工事監理者と建設業者で遣方の確認をしています。

境界からの離れは600であることを確認しました。

境界からの離れは600であることを確認しました。

誤って動かすことがないように、周囲をモルタルで囲って管理している例です。

誤って動かすことがないように、周囲をモルタルで囲って管理している例です。

道路に鋲を打って、通り芯の逃げ墨にしています。

道路に鋲を打って、通り芯の逃げ墨にしています。

「仮設工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

関連記事

2017/12/25

集合住宅編 第37回
おわりに

約3年間にわたり連載してきた...

2017/11/29

集合住宅編 第36回
昇降機等工事

設計者は設計図書作成時に...

2017/10/30

集合住宅編 第35回
給排水衛生設備工事、空調換気設備工事-5

設備工事は大きく電気設備工事...

新着記事

土木遺産を訪ねて

2024/11/01

File 40 三石の煉瓦拱渠群

今回の歩いて学ぶ土木遺産は、JR男鹿駅から船川港にある選奨土木遺産「第一船入場防波堤」と「第二船入場防波堤」をめざす行程です。出発点となるJR男鹿駅(2018年新設)の駅舎は...

現場の失敗と対策

2024/11/01
基礎工事 1)オールケーシング 硬質地盤におけるケーシングの引抜き不能

コラム

2024/11/01
自己治癒コンクリートについて思う

働き方改革

2024/11/01

日常の労務管理Q&A 第4回~時間外労働について

もちろん、業務上必要な残業は、36協定の範囲内で命じることができます。そもそも36協定(時間外・休日労働に関する協定届)とは...

トピックス

2024/11/01

令和6年度 土木学会選奨土木遺産 ―阪神甲子園球場など14件を選定―

公益社団法人土木学会は、令和6年度の「選奨土木遺産」に認定した14件を発表しました。今回は、廃川敷に計画された「甲子園開発」の先駆けとして...

今月の一冊

2024/11/01

『建設 未来への挑戦 国土づくりを担うプロフェッショナルたちの経験』

最先端のデジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)、女性や高齢者、外国人などが活躍できる多様性の実現、働き方改革など、従来のイメージを変革するさまざまな...