2016/04/27
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
タイル材は、マンションの外壁、エントランスの壁や床などによく使われています。吹付け塗装仕上げよりも高級感があり、耐久性がある材料です。外壁にタイルが使われた場合には、タイルが剥離して人にあたれば、大けがをする可能性があります。そのような事故を起こさないように、タイルの張付け強度・耐久性は重要な監理項目になっています。
タイル工事では施工図(タイル割り図)が重要な監理項目になります。躯体図にタイル割り図が反映されていなければ、斫りや左官による補修が生じて、コンクリートとタイル下地の剥離の要因になります。適切なタイル下地を作るためには、タイル割り図から躯体の寸法を決める必要があります。
また、タイル工事と取合う他の工種、サッシ工事、金物工事、設備・電気工事なども、タイル割り図から寸法や位置を決めていかなければなりません。工事監理者は施工者がタイル割り図を作成し、躯体図や他の施工図の納まりを検討していることを確認することが重要です。
タイル工事の監理フローの概要は、次のようになります。
タイル工事では、できるだけタイルの半端な寸法が入らないように、タイルが施工される箇所のすべてについてタイル割り図を作成します。タイル割り図に合わせて、サッシ、金物、設備・電気の盤やプレートなどの寸法や位置を決めます。タイル仕上げ寸法からタイル下地の寸法を出し、躯体図を作成します。工期の早い段階でタイル割り図を作成し、その寸法に合わせて他の工事の納まりを決めていくことが、建物を出来栄えよく仕上げるために必要になります。
タイルの種類は強制吸水率により、「Ⅰ類:吸水率3%以下」「Ⅱ類:吸水率10%以下」「Ⅲ類:吸水率50%以下」という分類になっています。旧JISの吸水率による区分では、「磁器質タイル1%以下」「炻器質タイル5%以下」「陶器質タイル22%以下」という分類でした。磁器質タイルでも吸水率の高いものや、逆に吸水率の低い陶器質タイルも製作されるようになったために、2008年にJISが改定されました。
タイル工事は、タイルの下地作成、タイル張り、目地詰め、タイル洗いの順に進みます。タイルの剥離が無いように、確実な施工を監理します。
タイル下地に浮きや不純物の付着がないことを確認します。下記の写真の例は、タイルの付着が確実になるように、下地を超高力水洗浄して下地の目荒らしをしています。
下記の写真は、コンクリートとタイル下地のはく離を防ぐために、型枠工事でPコンの代わりに、はく離防止用の製品を打ち込んだ例です。これにより、タイル下地の付着力を高めます。
搬入された材料の仕様と数量を確認します。製作したタイルは見本と比較をして、色調などを確認します。タイル下地にプライマーを塗布し、下地の水分吸収を調整し、付着力を高めます。
タイルを張り付けるために、張付けモルタルを塗ります。
張付けモルタルにタイルを張り付けます。小さなタイルはシート状のものを、大きイルは1枚ずつ張り付けます。ビブラート(振動)や叩きで、タイルの裏側にモルタルが付着するようにします。
タイルが張り終わったら、目地を詰めます。目地を詰めて硬化した後に、タイル洗いを行います。タイル洗いではモルタルを落とすために酸を使いますが、酸に弱い石や金属などは養生をしたり、酸をよく洗い流したりする必要があります。
タイル張り完了後に、タイルの不陸などがないか、出来映えを検査します。また、タイルの付着状況に不具合があると、将来のタイルの落下につながります。付着の検査では、打診音による浮きの検査と、引張試験による接着強度試験があります。
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