2016/08/30
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF 形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
マンションの建具工事では、大きく鋼製建具工事(アルミ、スチール、ステンレスなど)と木製建具工事に分けられます。鋼製建具工事は、建物の外観のデザインを決める大切な要素であり、機能的にも重要な工事です。鋼製建具の寸法は設計図書で定められていますが、現場では仕上げとの関係を検討し、寸法を調整することがあります。鋼製建具の施工図(サッシ図)では仕上げとの納まりが検討されていることが重要です。たとえば、仕上げがタイルの場合にはタイル割りに合わせて鋼製建具の寸法を決め、タイル割りと鋼製建具に合わせて躯体図の寸法を決めます。監理者はサッシ図で施工者が十分に検討していることを確認します。
鋼製建具は建築基準法の排煙基準、換気基準、採光基準、避難通路基準などとも関係するので、鋼製建具の寸法を変更した場合には注意が必要です。仕上げから鋼製建具の寸法を決めますが、現場では躯体打設後、最初に鋼製建具を施工します。鋼製建具が取付けられたら、鋼製建具を基準にして仕上げを造っていきます。鋼製建具の仕様、納まり、法令、取付け状況などの確認が、監理者の重要な監理項目になります。
木製建具工事の監理で重要なことは、監理者は実際に使う人のことを想定して、使い勝手が良いかどうか、使う人のニーズが満たされているかどうかを確認します。ガラス工事では、ガラスの種類、網入りの有無など、使う人のニーズや法令との適合などの確認が重要になります。
鋼製建具工事の監理フローの概要は、次のようになります。
アルミニウム製建具(以下、略してアルミ製建具という)は窓に使われることが多く、設計図書ではアルミ製建具の窓をAWという記号で表しています。外壁の窓に多く使われ、色もシルバー色だけでなくブロンズやブラックなど種類があります。また、艶があるもの、艶を消したものなど、表面加工にも種類があります。
「監理者の心構え」に書きましたが、仕上げと建具との納まりをよく検討し、寸法を確定して建具を発注します。検討が不十分だと現場で納まらず、作り直しというケースもありえます。建具の寸法、位置、納まりが確定し、躯体図を作成し施工します。躯体の施工では、溶接用のアンカーを打込み、水切り部分の欠き込みなど、建具の取付けがスムーズにいくように前施工をします。
アルミ製建具の受入検査では、発注した仕様、寸法通りに納品されたかどうか、傷などがないかどうかを確認します。
設計図書で「膜厚検査」の指示がある場合には、計測器で計って検査します。
検査基準が16㎜以上に対して、18.7㎜で合格になっています。
施工者はサッシ取付け業者の入場前に、溶接アンカーの有無、位置を確認します。不足している場合は、後打ちアンカーを施工します。建具は3次元で取付けられますので、上下のレベル墨、左右及び前後の縦墨からの寸法を、現場に記入して指示します(または施工図面で指示します)。建具の取付け箇所ごとに躯体寸法をチェックし、建具が図面通りに納まることを確認します。
溶接の間隔が遠いと、建具の周囲にモルタルを詰めた時に、動きやゆがみが生じてしまいます。溶接の位置は、端部は150mm、中央は400mmピッチを基本とします。
サッシの取付け位置を、墨からの寸法で指示。
スチール製建具は、主に玄関扉、倉庫の扉など、ドアに使っていて、設計図書ではスチール製のドアをSDの記号で表しています。
アルミ製建具と同様に、仕上げと建具との納まりをよく検討し、寸法を確定して建具を発注します。躯体の施工では、溶接用のアンカーをコンクリートに打込んでおきます。
スチール製建具はドアの活用が多く、ドア枠の下側の沓摺部分(靴で踏む部分)のモルタル詰めが、ドア枠取付け後では隅々まで充填されないことがありえます。充填が不十分で空洞があると、踏んだ時に音が出ることがあります。そこで、ドア枠を搬入後に逆さにして、沓摺部分だけ取付け前にモルタルを充填しておきます。
下げ振りで建入れをチェックし、傾きなどを修正します。
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