打設中(コンクリートの特性とクラック)
2013/06/20
生コンは型枠の中に打ち込まれると、砕石などの骨材が沈下し練り混ぜ水が上昇する(いわゆる「ブリージング」)ことがある。今回の工事のようにスラブに組み立てられた鉄筋の直上部では骨材の沈下が抑制され、鉄筋のない部分では沈下が進行するので、このブリージング現象の進行の差によって、鉄筋の直上部にクラックが生じる(図2)。通常はこのクラックはコテ仕上げの段階でつぶすことになるが、今回の事例では寒さのためブリーシングが進行が遅くまだ進行中の状況でコテ仕上げを行ったため、クラックが発生したと考えられる。
クラックの幅は0.2mm以下であったが、水密性が要求される構造物であったため、クラック部をUカットして、エポキシ系樹脂でコーキングした。
コンクリート構造物の品質はクラックの程度に大きく左右されるが、クラックの発生はコンクリートの物性上、避けることの難しい現象でもある。
スラブコンクリートの打設では発生したクラックはコテ仕上げでつぶすことになるが、コテ仕上げの時機は、ブリージングが進行している状況では早すぎるし、コンクリートが硬化した後では遅い。このタイミングの判断を左官任せにしないで、監督員は、配合設計、予想される気温、スラブ厚等からあらかじめそのタイミングを想定しておく必要があり、さらに実際の作業の進行状況に応じて、適切に指示する必要がある。
事例は冬だったが、夏場はブリージングが早く進行するため、コテ仕上げのタイミングは早くなる。また、冬期の打設の場合は、ブリージングの発生を防止するために生コンクリートの配合設計時に単位水量を小さくすることもクラックの発生防止に有効である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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