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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事4)打設準備(型枠・鉄筋組立等)

適用する仕様書の違いに
気がつかなかったことによるトラブル

2014/06/26

工事の概要とトラブルの内容

図1 壁の打継ぎ部のモルタル層

図1 壁の打継ぎ部のモルタル層

ムの現場から転勤してきた現場監督が、浄水場の「ろ過池」工事を担当した。

ろ過池の壁(長さ30m、幅50cm)のコンクリートを打継ぐ際に、コンクリート打継ぎ部の付着を良くしようと考え、ポンプ圧送の先送りモルタルを打継ぎ部に満遍なく敷き均した。1:3モルタル、0.5m3をすべて型枠内に打ち込んだ。モルタルの厚さは平均して3cm程度であった。

5日後、雨模様の日に脱型すると、図1に示すように打継ぎ部が数cmの幅で湿気を帯び黒ずんでいた。また、黒ずんだ箇所はコンクリート表面が砂のようにざらついており、モルタルの層とコンクリートの層に分離したものになっていた。

原因と対処方法

打継ぎ部に敷かれたモルタルは、セメントペースト分が輸送管に付着して、結果として砂分がリッチとなったモルタルが型枠内へ送られ、黒ずんだ層ができたと考えられた。

水密性を要求される構造物だったため、打継ぎ部には止水鉄板は適切に設置されていた。発注者と協議した結果、漏水等の心配は無いと判断されたが、見栄えを良くするため表面処理で対処することにした。具体的には打継ぎ目を含む幅15cmの範囲をポリマーセメントモルタルで帯状にコーキングした。

さて、モルタルを打継ぎ部に敷き均す作業それ自体はダム工事では当然のこととして行われているが、以下で詳述するように今回の工事ではそもそも適切な作業ではなかった。以後のコンクリート打設では、コンクリート標準示方書どおり、ポンプ圧送の先送りモルタルは、筒先に用意したバケツで回収し、廃棄することにした。また、モルタルを運搬してきた生コン車は、すべてをポンプ車のホッパに流し込まず、筒先からモルタルが出た段階で、残りのモルタルは生コン車が持ち帰ることを徹底した。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

土木工事共通仕様書(ダム編)には「請負者は、設計図書に示す配合のモルタルをコンクリート打込み面に均等に塗りこまなければならない。モルタルの厚さは平均厚で、岩盤では2cm程度、水平打継目では1.5cm程度とする。」という記述がある。このため現場監督はその現場経験からすべてのコンクリート構造物の打継ぎ面には敷きモルタルを用いるものだと思い込んでいた。

これに対し、今回の施工で準拠しなければいけないコンクリート標準示方書では「コンクリートの圧送に先立ち、使用するコンクリートの水セメント比以下の先送りモルタルを圧送しなければならない。また、圧送後の先送りモルタルは、型枠内に打ち込まないことを原則とする。」と書かれている。この記述からわかるように、通常の構造物では打継ぎに敷きモルタルを敷くことは無く、まして先送りモルタルを型枠内に打ち込むことを原則として禁止している。

(ただし、解説の中で「新たにコンクリートを打継ぐ際に、その直前にモルタルを敷く場合の敷きモルタルの水セメント比は、使用するコンクリートの水セメント比以下とする。」という記述もある。)

ダムコンクリートは粗骨材に最大寸法が120mmや150mmといった大きなものを用いるため、レイタンスを削り取ったあとのコンクリート面の凹凸が大きくなり、付着強度を向上させるために打継ぎ面に敷き均しモルタルが義務づけられている。ただ、モルタルは施工面の出来映えを損ねるため、型枠際では控えることが多い。

蛇足だが、モルタルの調合はセメントと砂の割合のみで表されているため、プラントによって単位水量は異なる。水セメント比が異なるため圧縮強度もプラントによって大きく異なるため「使用するコンクリートの水セメント比以下」かどうかは着工前に確認しておく必要がある。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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