3)地盤改良
2014/02/26
施工時期が数十年前の古い岸壁であり、施工時の図面が存在しなかったため、詳細な構造が不明であり岸壁およびその背面の状態を十分に把握できないままに施工したことが基本的な原因であるが、技術的には以下の原因が考えられた。
1)方塊ブロック背面は止水対策が不十分であった可能性があり、吸出し現象により細粒土が流失し、地盤中の間隙が大きくなっており、改良時の回転切削の影響により地盤沈下が生じた。
2)吸出し現象により改良範囲の地盤は礫質土に変化していたため、間隙が大きいことによる噴射圧力の消散のため、所定の切削圧力が地盤内で発揮できず改良体の造成が出来なかった。
対策として、高圧噴射を再開するに先立って一次注入として薬液注入及びセメントベントナイト液(CB液)注入による間詰めをおこない、海側への吸い出しと噴射圧力の消散の防止を図った(図2)。一次注入により、吸出し現象により拡大した間隙を埋めた後、高圧噴射攪拌工による施工をおこなった。
施工時期が古い岸壁では、施工当時の図面等の資料が残っていない場合があるため、当時の施工に携わった関係者や普段から施設を利用している関係者へのヒアリングなどによりできる限り情報を収集すべきである。またボーリング調査だけでは、礫質土がどの程度連続して存在するかの面的な情報を把握することは困難である。よって、事前調査時に試掘をおこない地盤状態を目視確認し、出来るだけ改良対象土の性状を把握する必要がある。このように施工に関する情報が少ない場合においても、施工前から事前検討が特に肝要であり、懸念事項を想定して対策方法を検討しておくことが重要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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