
4)山留め他
2015/11/26
出水箇所の緩み具合や掘削中の状況などから、出水の原因は地盤調査を行ったボーリング孔の埋戻し不良であると推測された(図2)。砂礫層まで達している調査ボーリング孔の止水処理が不十分であったため、山留め掘削が進むにつれてボーリング孔が水みちとなり被圧地下水が噴出したと考えられる。なお、この調査ボーリング跡は、本工事のために実施したものではなかったので、事前には把握されていなかった。
対策としては、掘削工事を一時中断し、以下に示す手順で調査ボーリング跡に薬液注入を施工した(図3)。
なお、水の流れがあると薬液が固結(ゲル化)する前に流出して所定の止水効果が得られないことがあるため、ゲルタイムが5秒程度の瞬結タイプの水ガラス系薬液を使用した。薬液注入を行う範囲は(地下水流があると考えられる砂礫層は避けて)固結シルト層5mと、その上の砂質シルト層5mとした。
今回の出水トラブルは、工事とは直接関係のない過去の調査ボーリング跡が原因であり、事前に予測するのが困難な事例であった。ただし、山留め工事では地下水に関連したトラブルが非常に多いので、掘削中の湧水に対しては細心の注意を払う必要がある。今回も湧水に気が付いた時点で、より慎重に状況観察しながら施工していれば、もう少し早い時期に簡易に対策を講じることができたかもしれない。
なお、豊富な地下水が存在する地域では、過去に民家や産業施設で利用していた古い井戸や、建設工事に伴って設置したディープウェルなどが埋もれていることもあり、掘削工事中に思わぬ出水事故を招くことがある。したがって、山留め工事を行う場合には、施工前に実施した地盤調査結果だけでなく、過去の土地利用状況や周辺の工事記録なども入念に調べておくことが望ましい。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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