1)切土
2013/08/20
切土法面勾配1:1.0、3段強の切土段数で約25mの切土高さの道路法面切土工事を行った。地質は新第三紀の砂岩・泥岩の互層であり、全体に流れ盤の構造となっており、上段からの逆巻でフリーフレームを施工する計画であった。
切土工事では、逆巻施工の計画にもかかわらず、法面全体を切土したため、流れ盤を崩壊面とする小規模なくさび崩壊が発生した。その後、くさび崩壊の場所を中心に崩壊が拡大し、規模の大きな崩壊に発展した。
分布する地質が流れ盤であることは事前の調査で確認していたが、高角度の節理面が卓越して分布することまでは確認できていなかった。切土法面変状を防止するための対策工であるフリーフレーム工は、逆巻きにより施工する計画であったが、現場では3段程度であることから、安定上特に問題ないと判断し法面全体を切土したことが崩壊の直接の原因であった。加えて、切土による応力解放により、早期の段階でくさび崩壊が発生した。切土法面の上段付近の崩壊であったため抑え盛土による応急対策も実施できずに、崩壊が拡大していった。
事前の調査不足はあるものの、計画通りの施工手順を無視したことが変状を起こした最大の原因である。
対処方法としては、追加の調査を行い不安定土塊の規模を把握し、必要抑止力を求める安定解析により、対策工法としてアンカー工を採用し対策した。
切土法面の施工では、流れ盤の地山で逆巻きにより法面を補強しながら施工する場合があるため、事前に施工手順を確認しておくことが重要である。そのためには、事前に地質調査報告書をよく読んで地質上の問題点を把握しておく必要がある。もし万が一、事前の地質調査に不足があるような場合(地質構造や弱層面の有無、断層や破砕体、地すべり地形の有無、地下水による湧水の有無等)には、発注者に提案することも必要である。
また、施工手順通りに施工されているかどうかの現場管理も確実に行う必要がある。加えて、切土施工に合わせて切土法面観察を行い、不測の小崩壊も含めた変状状況の確認を行うことが重要である。
今回の事例のように、小規模なくさび崩壊であっても周辺地山のゆるみ(応力解放)を助長させ、大規模な崩壊へと発展することもしばしばある。したがって、変状規模の拡大を未然に食い止めるためには小規模なゆるみの段階で変状対策を取ることも重要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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