2017/03/31
集合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別の工事監理ガイドラインもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。
建築士が建物を設計し工事監理をしますが、建築技術の専門領域で建築士は、大きくは意匠系、構造系、設備系の3つの領域があります。監理者は工事監理で設計図書通りに現場が施工されていることを確認しますが、一般に杭の偏心や構造的な間違いなどについて、構造計算などの判断を要する場合には構造系の建築士と協議します。設備についても、特に専門的な判断が必要な場合には、設備系の建築士と協議します。大規模な集合住宅では、主となる意匠系の監理者と設備系の監理者が協力して工事監理をしています。
設備工事は、電気設備工事と機械設備工事(給排水衛生設備工事、空調換気設備工事など)の2つに分けられます。建築工事を統括する現場代理人がいますが、電気設備工事にも、電気設備工事会社の現場代理人が選任されて、電気設備工事全般を施工管理し、建築工事や他の専門工事との調整をしながら進めます。監理者は建築、電気設備、機械設備の現場代理人を集めて定例会議を開き、仕様の決定や変更事項への対応などを協議しながら工事監理をします。たとえば設備機器が変更になれば、建築工事の納まりが変わったり、電気の容量が変わったりすることがあります。建築工事、電気設備工事、機械設備工事はそれぞれに関連しているので、監理者は総合的な検討が重要になります。
監理者は電気設備工事では、施工計画・施工図、電気工事会社が行なう試験・検査の記録、実際の照明や機器の機能の有効性、盤・プレート類の取付け状態などを確認します。
電気設備工事の監理フローの概要は、次のようになります。
建築工事の初期段階で行う工事に、接地局工事があります。接地局としてのアース板(銅板)は建築物の下部にならないよう計画するのが原則で、接地極の故障や、接地抵抗値不足が発生した際の修理が容易に行えるよう配慮します。狭い敷地いっぱいに建築物が建てられるような場合、アース板では埋設が困難なことがあります。このような条件下では、アース棒(銅棒)による接地極を地面に打ち込んで対応します。
アース板は電気を大地に逃がす役割がありますが、接地抵抗値が低ければ、電気が大地に流れていきます。水分が多い土質であれば接地抵抗値が低く、定められた電気設備技術基準を満たします。一方、土質によっては接地抵抗値が高く基準を満たさない場合もあり、深い位置まで掘り下げたり、接地抵抗低減剤で抵抗値を低減したりすることも行われています。
躯体工事中に、電線を通すための配管をします。構造的な弱点とならないように、配管の位置や間隔には基準が定められています。
電気工事には比較的自由に曲がるフレキシブル配管が使われています。配管は波の形状をしていて、電線を通すときの抵抗が軽減されています。コンクリートに打ち込む配管はCD管と呼ばれてオレンジ色をしています。耐燃性(自己消化性)を必要とする箇所にはPF管を使用します。
次は壁配管の状態です。
次はスラブ配管の状況です。
配管工事の仕様の例を示します。
※配管仕様が異なることもあるので、設計図書の仕様によること。
躯体コンクリートが硬化し型枠が解体されたら、配管に電線を通線します。電線はスラブに固定しながら配線し、天井の器具やボックスの位置で束ねておきます。また、間仕切壁がまだ未施工なので、電線を間仕切壁の位置まで配線し束ねておきます。
コンクリートの出隅が電線にあたっていると、電線にストレスがかかり長い間に被覆が劣化するので、出隅にテープを貼って電線を保護しています。
天井から梁が出る部分では、最上部を除く一般階では梁を貫通するスリーブを入れずに、配線をするために梁をまたぐようにスラブ配管をしています。
最上階のスラブは雨漏りのリスクがあるので、スラブ配管を避けています。躯体工事中に梁にスリーブを入れて、梁を貫通して配線しています。
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