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2022/05/09

『生産性向上、働き方改革に向けた地域建設業の取り組み』に関する調査研究~生産性向上編~

I

コンコムを運営している一般財団法人 建設業技術者センターでは、良質な社会資本整備の前提条件である建設技術者の確保・育成に寄与することを目的に、建設技術者及び建設工事の施工管理に関する調査研究を行っています。この度、令和3年度に行った『生産性向上、働き方改革に向けた地域建設業の取り組み』に関する調査研究結果をとりまとめ、報告書を作成するとともにセンターのホームページに掲載しました。

令和元年度、2年度の2か年で実施した『地域社会を支える建設業および建設技術者の現状と課題』では、「生産性向上」「働き方改革」を積極的に推進している会社が少ないながらも存在することも把握できました。そこで令和3年度以降、それらの建設会社や、発注者である道府県を取材し、実際に効果が現れている推進策や好事例からその効果発現の要因を分析することにより、「生産性向上」「働き方改革」の更なる推進につながる方策についてまとめることを目的とした『生産性向上、働き方改革に向けた地域建設業の取り組み』に関する調査研究を実施しました。なお令和3年度は、「生産性向上」に関する取り組みとして、「i-Construction」のトップランナー施策の一つである「ICT活用」に着目して実施しています。

【調査の概要】

◎調査期間/令和3年10月~令和4年3月

◎調査対象県/山口県、和歌山県、茨城県

◎取材対象者/県本庁のICT活用工事担当課と、当該県内に本社を置く主として県発注工事を受注している建設会社

◎主な取材テーマ(県)

・生産性向上(特にICT活用)への取り組み状況と課題

・初期投資等への財政的な措置

・インセンティブの付与

・研修等の実施内容 等

◎主な取材テーマ(建設会社)

・生産性向上(特にICT活用)に取り組むきっかけと現在の取り組み状況

・今後の目標、課題とその解決方策

・人材の育成方法・体制整備

・生産性が向上した具体的事例

・これからICT活用に取り組もうとする建設会社に向けてのアドバイス 等

発注者への取材では、いずれの県においても、ICT活用の普及促進のためにどのような有効方策があるか悩みながらも、ICT建機メーカーと連携した講習会の実施や、発注方式の工夫等を推し進めていることが把握できましたが、本トピックスでは建設会社への取材結果を抜粋して紹介します。なお報告書では、第3章において取材結果を各県の取材先ごとに記載していますので、詳細はそちらを参照してください。

ICT活用に取り組む上で留意すべきこと

・ICT活用に取り組むには、細かくサポートしてくれる測量機器販売会社、コンサルタント会社と協力体制を築いておくことが重要。

・ICT活用に取り組む上で、大事なことは好奇心。興味がある人に頼むことが、一番の近道だと思う。その上で会社や現場のトップの方や、一番の熟練者の方が率先して取り組みを行うと、会社として取り組むスピード、熱意が違ってくる。

ICTを継続的に活用するには?

・ICT活用が軌道に乗るまで3年程度かかる覚悟が必要。取り組み方はいろいろあるが、ノウハウを学んでいく積み重ねが重要。

・ICT施工には、「大きな建機を使う」、「コストもかかる」、「時間管理も必要」などの課題に対応できる、管理能力、施工能力が必要。またICT施工と従来施工を使い分けることや、短期間でICT施工を終わらせることが肝要。

小規模の現場でICT活用に取り組むには?

・500m3程度のボリュームの土工でもICT活用を実施している建設会社もある。土量ボリュームにかかわらず、ICT活用により生産性が向上できると見込まれるものを的確に判断できるノウハウを持つことにより、ICT活用に積極的に取り組んでいくことが必要。

・ICT活用に取り組んでいる、あるいは取り組みを始めようとしている会社との勉強会、情報交換などを活発に行い、取り組み方のヒントを得ていくことが重要。

・小規模工事にICT活用を拡大・普及していくために、近年開発されている小型建機に後付けで取り付けるICT機器を活用することも必要。120万円程度で後から取り付けることができた事例もある。

・施工現場自体がICT施工に向くか向かないかの判断や、現場の中で施工箇所ごとにICT施工の適否を判断してICT施工と従来施工を使い分けることが必要。

また「ICTを活用できる人材育成、体制の確保」について、継続的な現場での実践、女性職員の配置、出向等による実践での習得、M&A、仲間づくり等、の取り組みを掲載しています。

今回の調査研究を通じて、ICT活用に既に取り組んでいる建設会社は、どこも楽しそうに自信をもって工事を実施し、「より生産性を向上できる方法はないか」と常に意識して取り組んでいることが印象的でした。

ICT活用は、現在の建設業が抱える課題を解決していく上での、大きな手法のひとつであり、その普及拡大を進めていく上ではいろいろと解決していかなければならないことはありますが、これらは受注者だけで解決できるものではなく、発注者も同じ意識で取り組んでいく必要があります。

ICT活用にまだ取り組めていない建設会社においても、いずれは取り組まなければいけないと認識しているものの、一歩を踏み出せていないのが現状です。今回の調査研究の報告書では、ICT活用に取り組むきっかけとなった工事内容なども掲載しており、その一歩を踏み出すための参考となると思いますので、ぜひご一読ください。

最後に、取材にご協力いただいた、各県の担当部局と建設会社の皆様に厚く御礼を申し上げます。

 

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