2024/06/03
国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るため、2016年度(平成28年度)よりICT施工をはじめとする「i-Construction」の取り組みを進めてきましたが、その取り組みをさらに一歩進め、建設現場のオートメーション化へとステージアップを図る「i-Construction 2.0」を、2024年(令和6年)4月16日に策定・公表しました。
CONCOMでは、この策定の狙い、ポイントなどについて、国土交通省大臣官房参事官(イノベーション)グループの桝谷企画専門官に話を伺ってきましたので、紹介します。
桝谷さん
※ 文中の図表の出典は、いずれも国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~ 」(令和6年4月)です。
国土交通省では建設業における業務や働き方の変革を行うインフラ分野のDXを進めているところですが、我が国の生産年齢人口が2040年度には2割減少すると予測されているなかで、インフラの整備・維持管理を的確に実施し、国民生活や経済活動の基盤としてその機能を持続的に発揮していくためには、建設現場の生産性の向上をもっと強力に進めていくことが不可欠であるということを今般、改めて認識しました。そこで現場の生産性を高める「i-Construction」に焦点を当て、そのステージをあげてさらに強力に進めていくための「i-Construction 2.0」を取りまとめました。
ここでは、建設業において生産年齢人口が約3割減少し、従事者数が2/3になったとしてもインフラの機能を維持できるよう、生産性を1.5倍にすることを目指しています。
これらの施策は引き続き進めていきますが、今回新たに取り組みを目指すこととしたのは「自動化(オートメーション化)」で、これがポイントになります。
なかでも、「施工のオートメーション化」は建設業の将来に向けて必ず実現すべきことと考えています。まだまだ遠い未来のことと感じられるかもしれませんが、ICT土工やBIM/CIMなど、10年前には遠い未来のことと感じられたものも今では身近になってきた日進月歩の状況を踏まえると、今から実現に向けて注力していけば近い将来、実現の姿がはっきりと感じられるようになると思っています。
なお、「施工のオートメーション化」にはICT技術の活用が不可欠です。現在でもICT施工をはじめとして、バックオフィスの活用なども含めてICT技術の活用の取り組みはいろいろと進められていますが、今後、建設業においてはますますICT技術を使いこなす技術力が求められてくると考えられます。建設技術者の皆様にも、高い関心を持って取り組んでいただけたらと思います。
オートメーション化については上記3つの施策を打ち出しましたが、建設会社の皆様には、どの施策からでも結構ですので、「オートメーション化」にぜひ取り組んでいただきたいと思います。ただ、取り組むための初期投資が大きいと「取り組みにくい」と感じられると思います。そういう意味では、初期投資が大きくなる、施工のオートメーション化よりも、初期投資が小さくてすむ「施工管理のオートメーション化」や「データ連携のオートメーション化」が取り組みやすいと思います。
例えば、「施工管理のオートメーション化」に関しては、今年度(2024年度)から「完了検査も遠隔臨場での実施が可能」としました。このようにオートメーション化の活用の場を今後もどんどん広げていきたいと考えていますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
もちろん、受注者の方々が効率よくICT技術を活用でき、間違っても二度手間が生じることなど無いよう、発注者も十二分にICTに関する技術力を向上させていきます。「発注者の技術力が低下している」、「技術職員の数が不足している」というご指摘も多々いただいているところですので、受注者の方々だけではなく、発注者自らもICT技術のさらなる活用を図り、上記課題を少しでもカバーできるよう、取り組んでいきたいと考えています。
「i-Construction 2.0」における2024年度の国土交通省の主な取り組みは下図の通りです。
私見にはなりますが、上記のうち特に取り組みを進めていきたい内容を以下に紹介します。
3次元データの活用は、施工に不備が生じない設計を実施しやすいよう、フロントローディングにシフトしていくことが大きな長所であり、設計が積算のための道具と化すことがなく、現場に見合った内容としていくことが、建設生産システム全体の生産性向上のためにも必要な取り組みと言えます。
CADも2次元から3次元になって久しく、機械や建築の設計等において、なくてはならないものになっています。また、海外でも3次元設計が当たり前になってきていると聞きます。このため、3次元設計を進めるための課題について、設計コンサルタント会社の方々と意見交換を実施しているところです。その結果を踏まえ、課題があれば、その関係者とも意見交換を行い、発注図書の3次元設計データ化にむけて、ロードマップを早急に作成していく予定です。
建設会社の方から「発注図書が3次元設計データになれば、施工面での課題を速やかに把握できるので早急に進めて欲しい」という声も聞こえてきており、早急に取り組んでいくべき重要な課題だと思っています。
より高度な品質管理が確保できるように電子納品・保管管理システムの改良等の検討を進めます。3次元設計データに属性情報を加えたBIM/CIMモデルを作成し、施工データに置き換えたとしても、そのデータを発注者がどのように維持管理に活かしていくかを明確にしていないと、データは宝の持ち腐れになりますし、施工者がどのようなデータをどのような形で発注者に引き渡せばよいか決まっていきません。
そこで最初の一歩として、同じ施工方法や材料、製品等を使った現場を効率良く検索できる取り組みを進めていきます。
ここまで「「i-Construction 2.0 」の概要を紹介してきました。繰り返しになりますが、「自動化(オートメーション化)」をポイントとした「i-Construction 2.0」は、生産年齢人口の減少が進んでいくなかで、国民生活や経済活動の基盤となるインフラ整備・維持管理を持続的に実施していけるのか、という強烈な危機感から策定されたものです。
今年度からは「罰則付き時間外労働の上限規制」が建設業においても適用が始まっているところであり、建設業の現場は時代に即した変化を取り入れていく必要があります。今回取りまとめた「i-Construction 2.0」には、各種施策の内容をわかりやすく示した資料も添付していますので、建設技術者の皆様におかれましては、ぜひご覧いただきまして、「自動化(オートメーション化)」の取り組みを少しずつでも取り入れていただきたいと切に願っています。
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