
土工事
土工事
2)盛土・軟弱地盤
2026/03/02
盛土に発生したクラックの原因を推定するとともに、適切な復旧および対策工法の検討を行った。
① 既往資料の確認 過去の資料によれば、当該箇所では道路表層に複数回クラックが発生していたものの、明確な原因究明には至らず、舗装のオーバーレイによる対症療法的な対応が繰り返されていたことが判明した。
② 地質調査および現地踏査の結果 ボーリング調査および室内試験の結果、当該地区の地質構成は図-2に示すとおりであり、盛土材は N 値 5 程度、その下位には礫混じり有機質粘土・粘土質シルト・風化泥岩・シルト岩が分布し、基盤は泥岩・シルト岩で構成されていることが確認された。 また、現地踏査では路肩の沈下量は35cmもあり、盛土小段排水路に目地の開きが認められ、のり尻付近では湧水の発生も確認された。
③ 地形条件の整理 地形図の検討から、当該盛土は山間部の沢地形を埋め立てて構築されたものであり、旧地形には3条の沢が存在していた。特に、のり面下部は上部より谷幅が狭いボトルネック形状を呈していた。
④ 地下水位および変状計測の結果 路肩と小段で実施したボーリング孔を利用して地下水位計およびパイプひずみ計を設置したところ、地下水位は降雨に敏感に反応し、最も高い時期には盛土中段付近まで上昇することが確認された。 2回目のクラック発生時期は、この地下水位が最大となった時期と一致していた。さらに、パイプひずみ計の観測結果から、風化泥岩・シルト岩層にすべり面の存在が確認された。
⑤ 原因の推定 以上の知見から、当該盛土ではボトルネック形状により沢からの浸透水が十分に排水されず、地下水位が上昇しやすい状況にあったと考えられる。その結果、風化泥岩層にすべりが発生し、クラックの形成につながったと結論づけた。
⑥ 応急対策および恒久対策の検討 応急対策として、図-3に示すとおり延長約40mの水抜きボーリングを上段13本、下段9本施工し、盛土内の地下水位低下を図った。 その後、詳細な安定解析を実施し、常時地下水位条件で安全率 1.2 を確保するため、図-4に示すようにのり尻部に押さえ盛土工法を採用することとした。
⑦ 押さえ盛土の施工方針 押さえ盛土には排水性を確保するため一部に栗石を使用した。また、現地発生材の有効活用を図り、経済性にも配慮した。
⑧ 舗装改修時の確認結果 盛土の恒久対策完了後、舗装改修工事において舗装面下を確認したところ、写真-1に示すように幅15cmの大きな亀裂が認められた。
本事例から得られた知見を整理し、同様の変状を未然に防止するための技術的留意点について考察した。
① 原因究明を伴わない補修の反復は問題解決につながらない 当該箇所では複数回の舗装補修が実施されていたが、クラックが繰り返し発生する根本原因の究明が行われておらず、結果として同様の補修を繰り返すのみとなっていた。
② 排水対策の効果は極めて大きい 排水ボーリングの施工により盛土内の地下水位は急激に低下し、それに伴ってすべり面の変状も停止した。以降、新たなクラックの発生は認められず、適切な排水対策が盛土安定に大きく寄与することが確認された。
③ 舗装面に繰り返しクラックが生じる場合は、路床・盛土の変状を疑うべきである 舗装を改修しても同一箇所にクラックが再発する場合、舗装直下の路床や盛土内部に大きな亀裂や変状が存在している可能性が高い。このような場合、表層補修を繰り返しても再発リスクは高く、詳細な地盤調査や内部構造の確認を行うことが重要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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