コラム:編集委員の独り言…

「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。

2026/03/02

インフラ構造物マネジメントの新しい考え方“群マネ”とは?

■インフラ(社会資本)の現状と将来の維持管理・更新費

このコラムの読者であればご存知のとおり、我が国において整備されてきたインフラの老齢化(建設後の経過年数の長期化)が進んでいてそれらの維持管理が重要である一方で、適切に維持管理を進めるための予算確保や人手不足が大きな課題となっています。

道路橋やトンネル等のインフラについて2023年時点で集計された、建設後50年以上経過するインフラの割合を図-1に示します1)。高度経済成長期以降に整備されたインフラは、今後、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなることが分かります。施設の老朽化は建設後の経過年数で一律に決まるものではありませんが、それぞれの施設が置かれる環境によって様々な劣化要因の影響を受け、適切な維持管理を施さないと多くの施設において老朽化が進み、その機能を発揮できなくなるリスクが高まることが懸念されます。

図-1 建設後50年以上経過するインフラ(社会資本)の割合<sup>1)</sup>

図-1 建設後50年以上経過するインフラ(社会資本)の割合1)

また、少し古いデータですが、同じくインフラについて平成30年度に実施された、30年後(2048年度)までの維持管理・更新費の推計結果を図-2に示します。これらは予防保全に基づく維持管理・更新が行われる前提での推計で、推計結果は幅のある値(最小値~最大値)として示されていますが、図は最大値を用いて作成されたものです。この推計では、とくに道路や下水道の分野では維持管理・更新費が今後約10年(2035年頃まで)は明らかに増加し、その後も同等程度の費用がかかる結果となっています。インフラ全体にかかる費用の傾向も変わっていません。つまり、今後も長期にわたって維持管理・更新の需要は増加・継続するのが明らかですので、民間事業者としては実際の点検・調査や修繕・更新等の施工を担っていかねばならないことになります。

そのような中、“群マネ”と呼ばれるインフラ構造物のマネジメント手法を用いた取組みが進みつつあります。

図-2 分野別の維持管理・更新費の推計結果<sup>1)</sup>

図-2 分野別の維持管理・更新費の推計結果1)

■新しいインフラ構造物マネジメントの考え方“群マネ”

“群マネ”とは「地域インフラ群再生戦略マネジメント」の略で、国土交通省が推進しているインフラ構造物のマネジメント手法です。的確なインフラメンテナンスを確保するため、様々なインフラを「群」として捉えることで、効率的・効果的にマネジメントしていく取組みです。2022年12月に、国土交通省の社会資本整備審議会・交通政策審議会 技術分科会 技術部会により提言されたものです2)

今後のインフラメンテナンスを考える上で、官民を問わず、我々建設技術者が理解しておくべきテーマであり、これについて概要を紹介したいと思います。

■地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の概要

インフラ老朽化と人手不足が同時に進行していく中、自治体(管理者)と事業者(実際にメンテナンス業務に関わる民間企業)の双方で現場の悩みが深まっており、これまでの制度や慣習のままでは、近い将来、インフラを守っていけないという不安が高まりつつあります。そこで、技術系職員が限られる中でも、的確なインフラメンテナンスを確保するため、複数自治体のインフラや複数分野のインフラを「群」として捉えることで、効率的・効果的にマネジメントしていく取組みが“群マネ”です。

この“群マネ”をより一層浸透させ、全国に展開させるため、2025年10月に「群マネの手引きver.1」(図-3)が公開され、ウェブサイトには群マネ特設HPも開設されました3)

図-3 群マネの手引きVer.1(表紙)<sup>3)</sup>

図-3 群マネの手引きVer.1(表紙)3)

“群マネ”の概念を図-4に示します3)。“群マネ”では、広域かつ多分野にわたる地域インフラ群に対して、自治体・事業者・技術者がタッグを組んでマネジメント戦略を立て、スケールメリットや創意工夫を発揮することでメンテナンス業務を効率化させることを目指しています。

ここでは、様々な要素を束ねることで効率的・効果的なインフラメンテナンスにつなげることとされており、「手引き」には、自治体の束、事業者の束、技術者の束、プロセスの束、時間軸の束、データの束、学の束、住民の束といった「群マネを支える“束”」について説明されています。さらには、従前の包括的民間委託の領域を超えた広域連携や多分野連携の取組み、事業者連携やプロセス連携、複数年契約などの仕組みや事例が紹介されています。

“群マネ”の効果やメリットとしては、自治体(管理者)においては「予防保全型のメンテナンスサイクル」の構築が期待され、事業者(民間企業)においては維持管理業務が効率化され、収益性が向上することで、地域建設業の経営安定化・体制確保につながり、「魅力的なメンテナンス産業」の確立が期待されます。

図-4 群マネの概念<sup>3)</sup>

図-4 群マネの概念3)

■埼玉県八潮市の道路陥没事故の教訓

2025年1月に埼玉県八潮市において発生した下水道管路破損に起因するとされる道路陥没事故により、我々建設技術者は、インフラの安全性確保と維持管理の重要性をあらためて思い知らされました。

そして、国土交通省が設置した「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」は、2025年12月に第3次提言(信頼されるインフラのためのマネジメントの戦略的転換)を公表しました4)。この提言においては、新たなインフラマネジメントに向けた5つの道すじが示されています(この詳細は参考文献を参照してください)。そして、これらの道すじを実現するため、「群マネの推進」の必要性が明記されているとともに、技術系職員も「群」となって広域的に連携する「人の群マネ」の導入による地方公共団体間の協力体制の強化の重要性、さらにはインフラマネジメントに必要な予算の安定的な確保や予防的インフラマネジメントへの重点的な財政支援の必要性について明記されています。その後、国土交通省において「インフラマネジメント戦略小委員会」が設置され、2026年1月30日に第一回委員会が開催されました。ここでは、今後のインフラのマネジメントのあり方について、“群マネ”などを含めた議論がされるものと思われます。

このような動きからも、これからは、“群マネ”の本格的な導入とともに、地域のインフラ群のマネジメント戦略に基づく新しい維持管理・更新業務(工事)の発注形態が拡大していくことが考えられます。適正な予算の確保とともに、新技術の活用促進も含めた新しいインフラマネジメントの浸透によって、事業者(民間企業)の活躍の場も広がる可能性がありますので、ぜひ一度、上記の「第3次提言」や「群マネの手引きVer.1」に目を通すことをお勧めします。

参考文献

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