現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

2026/03/02

発注者の変更要望に、迅速な設計変更を提案。
工期を大幅に短縮するとともに、CCUSモデル工事のハードルもクリア。

回の現場探訪(表彰工事)は、令和7年度(令和6年度完了工事)国土交通省 中部地方整備局・岐阜国道事務所の事務所長表彰を受けた「令和4年度 東海環状養老海津地区南地盤改良工事」です。この工事の監理技術者を務めた、株式会社 加藤建設 (愛知県海部郡)の小松祐哉さんに、工事の概要と工夫された点、特に大幅な工期短縮を実現した取り組みについてお聞きしました。また、当該工事は中部地方整備局の「CCUS(建設キャリアアップシステム)モデル工事」として発注された工事でもあり、協力会社の職員の管理方法や、CCUSを管理する上で注意していることなども併せて紹介します。

【工事概要】
工事概要 地盤改良一式、仮設工一式
発注者 国土交通省 中部地方整備局 岐阜国道事務所
工期 令和5年1月10日~令和7年1月15日
受注者 株式会社 加藤建設
施工場所 岐阜県養老郡養老町地先
請負金額 941,424,000円(税込)
監理技術者 小松 祐哉

Q 今回の工事の概要(目的)について簡単にご説明ください。

図1)東海環状自動車道(出典/国土交通省 中部地方整備局HP) 図1)東海環状自動車道(出典/国土交通省 中部地方整備局HP)

当工事は、国道475号「東海環状自動車道」整備のための地盤改良工事となります。東海環状自動車道は、名古屋の周辺半径30~40km圏に位置する愛知、岐阜、三重の3県の諸都市を環状に連結し、東名・名神高速道路、中央自動車道、東海北陸自動車道、新東名・新阪神高速道路などの高速自動車道と一体となって、広域的なネットワークを形成する総延長約153kmの高規格幹線道路です。今回の工事区間は、「養老IC」と「北勢IC」の間に位置する約230mの区間となります。

Q 当初計画にない工法が追加されていますが、この追加の経緯について教えていただけますでしょうか

当初計画では、地盤改良工事として「バーチカルドレーン工法」と「固結工(CI-CMC工法)」で行う予定でした。しかし、隣接するエリアで別発注のボックスカルバートの埋設工事があり、発注者からその工事をなるべく早く着工したいとの要望があり、施工計画を再検討することにしました。そこで、ボックスカルバートの施工に必要となるヤードを先に引き渡すため、当該箇所のドレーン工の一部を先行して実施し、早期に引き渡せるように、固結工、ドレーン工の2工種同時施工で対応することとしました。2工種同時施工を実施し、施工日数の短縮を図ることができたことで、次工事のボックスカルバートの施工に早期に引き渡しを行うことができました。また、これに伴い、ドレーン工の施工で必要となる排水層の施工が必要になったため、新たに「サンドマット工」が追加となり、さらに工期の初期段階で、地中に農水管の残置が確認されたため、そちらの撤去及び移設作業も追加で行いました。

図2)全工程ステップイメージ 図2)全工程ステップイメージ

Q 今回の工事で、特に大変だったこと(想定外)。それについてどのように対応したのか教えてください。

写真1)2工種同時施工の様子 写真1)2工種同時施工の様子

やはり最初の段階で、他工事との調整によって全体計画の見直しが必要となったことですね。対応は、先ほど話した通りですが、結果として2工種同時施工で行えたことで、工期面でもかなり短縮できましたし、想定外ではありましたが自分の経験としても非常に勉強になりました。また、工期の初期に発見された既設のコンクリート杭の撤去については、対応方法について提案したところ、当時の監督官に迅速に判断していただけたことも非常に助かりました。スタートで躓くと、工期全体に影響が出ますので。

Q 工期について、当初予定より8か月近く前倒しで完了したようですが、工期短縮を実現した具体的な工夫を教えてください。

施工計画全体を見直して2工種同時施工にしたことが、工期短縮を可能にした一番の要因だと思います。また、深層混合処理を行うCI-CMC工法において、GNSS杭芯誘導システムを活用し、杭芯の位置をモニター確認することで、正確かつスピーディな杭打ちを行うことができました。当該現場では1000本以上の杭打ちを行いましたので、この作業だけで相当な工期短縮ができたと思います。杭のセット完了時も「Vizios3D」機能を活用してタブレット端末で深度計0mを確認することができましたので、次の施工にもスムーズに移行することができました。

写真2)タブレットによる杭芯セット確認 写真2)タブレットによる杭芯セット確認

バーチカルドレーンにも「CSドレーン工法」を採用し、所定の深度までの打ち込み状況をモニターで確認しながら行いました。この際、ドレーン材にも感知材が埋め込まれた材料を使用し、ケーシング内に設置した感知装置で共上がりの発生を確認することで施工不良を防止することができました。また、ドレーン工においても、ICT技術を活用し、固結工同様に杭芯セットをモニターで確認することができる方法を活用し、施工を行ったことも工期短縮に大きく起因したと思います。

写真3)モニターによる深度確認 写真3)モニターによる深度確認

工期面だけでなく品質管理の面でも、ICT機器の活用は、今の現場では欠かせないと思っています。

Q 今回の工事は中部地方整備局の「CCUSモデル工事」でしたが、基準をクリアするために行った対応について教えてください。

CCUS(建設キャリアアップシステム)活用モデル工事は、設定された基準を達成することで工事成績評定の「創意工夫」の「その他」において加点されますが、一方で、以下のような厳しい目標基準が定められており、概ね3か月に一回の頻度でチェックを行い、その平均値を提出しなければなりません。

1)登録事業者率(計測日における「CCUS登録事業者の数/下請企業の数)
※下請企業の数とは施工体系図に登録されている企業の数

● 目標基準/平均90%

2)登録技能者率(計測日における「CCUS登録技能者の数/技能者の数)
※技能者の数とは計測日に施工体系図に登録されている技能者の数

● 目標基準/平均80%

3)就業履歴蓄積率(計測日までの期間に「カードリーダーへのタッチ等を実施して現場へ入場した技能者の延べ数/工事現場へ入場した技能者の延べ数」)

● 目標基準/50%

今回の工事では、私たちも含めて登録事業者は20社ありましたが、すべて「CCUS登録事業者」でした。最近はほとんどの業者がCCUSに登録していることもあり、登録事業者率の達成はそれほど難しくはないと思います。やはり、大変なのは日々の技能者さんの管理だと思います。「タッチし忘れた」「タッチしたと思っていた」というケースがないよう、朝のKY活動の際、昼休憩の際等、「タッチ忘れ」がないか度々声掛けをして確認しています。手元のデータを確認して個別に指導することもあります。現在は、カードリーダーへのタッチを忘れても、建退協への届け出で済みますし、技能者さんにもまだCCUSの必要性や意味が十分に浸透していないようにも思います。それがいまのシステムの課題ではないでしょうか。また、今回は地盤改良の工事でしたので、期間中は同じ協力会社さんでしたが、途中で工種が変わるような工事だと、協力会社さんもその都度変わりますので、管理は大変になると思います。

図3)CCUS報告履歴一覧表 図3)CCUS報告履歴一覧表

Q 小松さんが日頃、現場の責任者として心がけていることは?またこれからの目標はありますか?これから現場代理人、監理技術者をめざす若い技術者にアドバイスをお願いします。

現場の監理者として一番大切なのは「コミュニケーション」だと思います。一緒に現場で働く協力会社の技能者さんはもちろん、発注担当者や周辺住民とも、常に機会を見つけてコミュニケーションを取っておくことが、想定外の事象が起きた際にもスムーズに対応できると思います。私自身の経験ですが、1年目2年目ぐらいのころ、現場の補佐を務めていましたが、当時は上司に聞くことがなかなかできないことがありました。

写真3)小松さん 写真3)小松さん

「こんなこと今さら聞いたら怒られるのでは」と尻込みしてしまうことも少なくありませんでした。そんなとき、普段から気さくに話してくれたベテランの技能者さんが「こうしたらいいんじゃない」とか「前の現場ではこうしていたよ」とアドバイスをしてくれ、何度も助けられました。そうした経験からも、普段から「話しやすい」雰囲気を作っておくことが大事だと思っています。
後輩の技術者にも、自身の経験から、自分からは聞けない、聞きづらいこともあると思いますので、積極的に声掛けするように心がけています。また、彼らには「安全管理」に対して高い意識を持つように指導しています。どんなに良い工事管理をしても、事故が起きてしまったのでは評価されません。まずは安全第一、安全を担保した上で、少しずつ自分なりの創意工夫を考えていけばよいと思います。

おわりに

今回取材した小松さんは、現在入社10年目の32歳。建設の現場ではまだまだ若手と呼ばれる年齢にも関わらず、非常に落ち着いた印象でした。現場で多くの技能者を統括する際にも、そうした落ち着きが信頼感となっているのだろうと思いました。また、小松さんが文中で触れた「技能者さんにもまだCCUSの必要性や意味が十分に浸透していないようにも思います」については、国土交通省はもちろん、関連団体、私たちコンコム事務局も含めて、その目的や意義について周知する必要があると感じました。

◎建設キャリアアップシステムが目指す建設業(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/ccus_about.html

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