現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事

土工事

2)盛土・軟弱地盤

2025/06/02

カルバート工事における置き換え基礎の変状事例

工事の概要とトラブルの内容

-1に示すように、現場打ちボックスカルバート(以下C-BOX)工事において底版コンクリート施工後、しばらくしてから、通常とは明らかに異なる底版の沈下が確認された。直ちに工事を中止して動態観測を続けたところ、3か月で約20mm沈下を観測した。C-BOXは全長約60mで、5つの躯体に分かれて施工する予定であった。1つの躯体は高さ約7m、幅約10m、延長約12mである。また側壁および底版の厚さは550㎜、頂版厚さは500㎜であった。なお底版施工の際には側壁コンクリートの一部も打設していた。また鉄筋は全量加工済であった。
C-BOX内部は道路として利用する予定であったが、このまま施工するとさらに沈下が進む可能性があり、道路の機能が満足できない可能性が考えられた。

図-1 変状の起きたC-BOXの断面図図-1 変状の起きたC-BOXの断面図

原因と対処方法

(1)原因の推定

① C-BOXの基礎は砕石盛土によって構築され、平板載荷試験による地耐力は十分確保されていた。

② 砕石盛土が構築される前の地盤は上からローム層、凝灰質粘土層、砂質土層、基盤層となっていた。

③ 図-2に示すようにローム層、凝灰質粘土層は強度が低いため、影響範囲を撤去して砕石で置き換えていた。

④ 砂質土層は洪積層であり、自然含水比25%、粒度は砂70%、粘土シルト30%で構成され、N値10程度であり液状化の心配はなく、十分な強度を有するものと考えていた。

⑤ この砂質土層(厚さ6m~10m)について、変状発生後に別の箇所で間隙比を確認したところ、e=0.93と比較的緩い砂質土であることが分かった。この上に平均8m、最大10mの砕石による盛土を構築したため、砂質土層が圧密沈下し、それによってC-BOXの底版が沈下したものと推定した。

図-2 C-BOXと地盤の状態図-2 C-BOXと地盤の状態

(2)対処方法

C-BOXを撤去して最初から構築することは費用の面や工期に間に合わないことから現実的ではなかった。そこで、C-BOXの躯体工事を中断して、載荷盛土を行い、圧密沈下を先行させ、その後C-BOXの躯体を構築することとした。
図3に載荷盛土の概念図を示す。C-BOX構築後の裏込め施工によっても圧密が生じ、カルバート背面の沈下が懸念されたため、C-BOX内部と外部の両方に将来の盛土荷重に近くなるように砕石によるトンパックを載荷した。
図-4に躯体構築後からの沈下量の経時変化を示した。沈下データは5つの躯体の底版30か所の平均を表す。観測データに工事手順も付け加えた。

① 内部載荷工事のため躯体工事の足場を一度撤去した。その後底版上に鉄板1.6t/枚を敷設した。その上に1.7トンのトンパックを6段載荷した。これによる載荷応力は約90kN/m2となった。

② 内部載荷完了後約70日放置し、ある程度沈下が収束傾向を示したため、引き続き外部載荷工事を行った。

③ 外部載荷完了後約120日放置し、ある程度沈下が収束傾向を示したため、内部載荷を撤去した。その後躯体工事の準備として足場工を設置した。

④ 内部載荷撤去後約80日後ほぼ沈下が収束したので、躯体工事を再開した。

⑤ その後、外部載荷に使用した砕石入のトンパックを裏込め等に流用し工事が完了した。結果として最終的に底版は当初より230mm沈下した。

なお、載荷盛土による沈下を動態観測によって進めたが、残留沈下が完全に収束してから躯体を施工することでは、工期に間に合わないことから、鉄筋加工の手戻りを大きくさせない範囲で、C-BOX躯体の内空を大きくし、残りの沈下に対応することとした。具体的にはC-BOXの土被りは1m程度しかないことから、C-BOXの頂版が上部道路の路盤に入らない限界の高さの関係から、側壁高さを逆算して500mmまで高くすることとした。修正設計の結果、鉄筋の定着長が不足する箇所が生じたが、底版と側壁について40mmコンクリートを上面増厚することで解消できた。
その後上部道路が完成したが、C-BOXは沈下やひび割れも発生していない。

図-3 内部載荷と外部載荷の模式図図-3 内部載荷と外部載荷の模式図

図-4 経過日数と底版沈下量の関係図-4 経過日数と底版沈下量の関係

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

本事例については、そもそも砕石で置き換えた基礎を、洪積層の砂質土が支持できるか検討をしていなかったことが大きな原因となっている。砂質土層は、ボーリングによるN値から液状化の判定をして良好な地盤と判断したが、液状化しないことが良好な地盤とは限らない。当初から置き換え基礎を想定した詳細な土質試験を行い、土質特性を加味して設計を行っていれば、早い段階で効率的な対策を検討できた可能性はあった。さらに、上部道路とC-BOXの道路との立体交差の高低差にほとんど余裕がなく、できることが限られていた点も対策を難しくしたと考えられる。

盛土や置き換えによって荷重が大きく増加する場合は詳細な土質試験を実施し、十分な検討が必要である。また盛土自体も圧縮沈下をしないように材料を吟味し、十分な締固めが必要であることは言うまでもないことである。

本事例が参考になれば幸いである。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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