現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、基礎工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

基礎工事

基礎工事

3)既製杭

2026/02/02

根固め部の施工不良による支持力不足

工事の概要とトラブルの内容

橋梁下部工の工事において、既製コンクリート杭の施工を行った。既製コンクリート杭はプレボーリング根固め工法、杭径φ1,000mm、杭長21.0mであった。

施工箇所の地層は、杭の施工基面から-16.0mまでN=3〜10程度の粘性土層、GL-16.0m〜-23.0mは砂質土層、GL-23.0m以深は砂礫層で構成され、この砂礫層を杭の支持層としていた。

本施工に先立ち、試験杭の施工を行った。掘削液(ベントナイト溶液)を注入しながら所定の深度まで掘削した後、杭先端部の支持層に根固め液(セメントミルク、W/C=60%)、杭外周部に杭周固定液(同W/C=100%)を注入し、攪拌混合を行いながらロッドと掘削ヘッドを引き上げた。その後、掘削孔に既製コンクリート杭の沈設を開始し、杭を所定の深さに設置を完了した時、杭周固定液の液面が沈降していることが確認された(図−1)。

図−1 トラブル概要図

図−1 トラブル概要図

原因と対処方法

杭周固定液の液面の沈降は、杭周固定液または根固め液の周辺地盤への流出が原因と考えられ、逸水は透水性の低い粘性土層および砂質土層ではなく、透水性の高い砂礫層で発生した可能性が高いと考えられた。

杭中間部および杭先端の根固め部の状況を調査するため、コアボーリングを行った結果、杭中間部からはセメント固結土のコアが採取できたが、根固め部の固結状態が十分ではなく、所定の強度が発現していない状態であることが確認された。このため、杭周固定液には問題は発生していないが、根固め液として注入したセメントミルクの流出により、十分に攪拌混合が行われていない状態であると推定された。また、地下水の流向・流速調査を行った結果、砂礫層における地下水の流速は95cm/min程度であった。

以上よりトラブルの原因は、地下水の流速が95cm/minであり、セメントミルクが流出する限界地下水流速の目安とされる80cm/min1)を超える流速があったことによるものと考えられた。

根固め液の流出を防止するため、 根固め液として用いるセメントミルクに増粘剤を1.5%添加して粘性を向上させることとした。再度実施した試験杭では、増粘剤を配合したセメントミルクにより、根固め液および杭周固定液の流出を防止できたとともに、根固め部の固結状態も良好であり、所定強度以上であることを確認できた。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

既製コンクリート杭のプレボーリング工法の他、鋼管ソイルセメント杭のようにソイルセメントを使用する杭の場合、地層条件にもよるが、セメントミルクが流出する限界地下水流速として80cm/min程度をひとつの目安としている場合が多い。また、今回のトラブルでは根固め液の流出のみだったが、孔壁の崩壊やこれに伴う杭の高止まり等のトラブルが発生する可能性もある。

このため、地下水の流速に懸念がある場合はあらかじめ地下水の流向・流速調査を行うことが望ましい。

杭基礎施工便覧2)によると、「杭設置後に、杭周固定液の液面沈降が生じた場合は、杭頭部までの杭周固定液の補充をする。なお、杭周固定液の液面沈降はその逸水が主な原因であるため、杭周固定液の濃度を高くしたり、増粘剤や逸水防止剤を添加したりして杭周固定液の流出を防止する対策をとる」とされている。

透水性の良い地層で構成されている地盤で施工する場合や地下水の流速により、セメントミルクの流出が懸念される場合は、セメントミルクの配合や増粘剤・逸水防止剤の添加を検討することが必要である。

参考文献
  • 1) コンクリートパイル建設技術協会:既製コンクリート杭の設計・施工Q&A集 平成21年4月
  • 2)日本道路協会:杭基礎施工便覧 令和2年9月

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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