
土工事
土工事
5)排水
2026/06/01
近年、短時間集中豪雨による排水施設の一時的な機能不全により、溢水が発生し、あふれ出た水がのり面を流下することが原因となって、のり面の浸食や崩壊を引き起こす事例が各地で発生している。
本稿では、切土のり面に設置された小段排水が原因となって発生したのり面崩壊を復旧した事例について、復旧時の工夫がうまく機能しなかった事例を紹介する。
現場は、国道沿いの約150mの切土区間である。最も高いところで3段、約20mであるが、ほとんどの区間は2段程度の切土となっている。1段目の上部の小段に排水溝が設置されている(図1)。
小段の延長は約130mで道路起点側の端部に縦排水が設置されている。のり面保護は植生工のみで行われており、排水溝は当初200×200のU字側溝が設置されていた。台風による豪雨によって、一段目ののり面が幅5mにわたって崩壊した。
被災後の調査の結果、小段に設けられた排水溝が落ち葉やごみによって閉塞し、雨水が小段に溢水して被災したのり面に流入、表面を侵食してのり面崩壊に至ったものと推測された。
復旧にあたっては、土砂が流出した区間について、砕石を盛り立てて復旧し、のり枠を設置して保護を行った。さらに崩壊の原因となった排水溝の機能回復にあたっては、小段全延長130mにわたって排水溝の寸法を200×200のU字側溝から450×450のU字側溝に変更して流下能力を高めるとともに、落葉やごみが排水溝を閉塞させないよう、溝の上部に金属製の網状の排水溝フィルタを設置した(写真1)。
復旧から約5年が経過した段階で復旧箇所の排水施設の機能についての追跡調査を行った。追跡調査は、小段排水の流末、縦排水の上部に水位計を設置して水位を連続計測した。
その結果を示したものが図2である。10分間雨量10mm程度までの少雨の際には、おおむね雨量に応じて水位が増加する傾向がみられた。現地の3年確率10分間降雨は110mm/hであるが、この降雨強度を超える豪雨は2回計測されたが、この2回の水位計の数値がかけ離れた値となった。
7月に計測された一回目の豪雨では10分間降雨量10mm以下の水位分布をほぼそのまま延長した水位となったが、8月に計測された二回目の豪雨では、10分間降雨10mm未満の際の計測水位と同等の値となった。これはほぼ降雨が捕捉されていない状態と考えられる。追跡調査では、縦排水からおよそ30mの区間は周辺の草を刈り取り、清掃をおこなった上で調査を行っている(図3)。
二回目の豪雨の後にフィルタを外して排水溝内を確認したところ、刈取清掃を行った30m区間では豪雨前に溝内に堆積していた枝葉が押し流された痕跡があったが、上流側の未清掃区間では豪雨後も枝葉が堆積しており、水が流れた痕跡がなかった。
これらの調査結果から、10分間降雨20mmを超える二回目の豪雨では、未清掃区間のフィルタ上にまで繁茂した植物によりフィルタが覆われ、排水溝に蓋がかけられたような状態になっていたのではないかと推測される。このため豪雨時の雨水のほとんどはフィルタを横過し、小段の下段ののり面へと流下している可能性がある。清掃区間では、排水溝は開放された状態にあり、小段より上方ののり面に降った雨はフィルタを透過して排水溝で捕捉されていると考えられる。なお、一回目の豪雨の際に閉塞が起こらなかった理由は、明らかではないが、例えば草の繫茂の違い、豪雨時の風の向きや強さの影響が考えられる。
二回目の豪雨時に閉塞が起こった後はフィルタが枝葉で覆われた状態であったと考えられるが、そのような状態でも通常の降雨は捕捉されている。これは閉塞状態でもわずかに隙間はあり、通常の降雨程度であればその隙間から排水溝内へと水が流入し、補足されているが、豪雨の際にはフィルタのせいでのり面上部の降雨が小段を超えて下部のり面へと流下する状態になってしまっていると言える。
図3 追跡調査時の排水溝の状況
今回の現場では、復旧時にU字側溝の大型化をしており、流下能力は十分であると考えられる。枝葉により蓋がされるような現象が起こらないよう降雨期には小段周辺の草刈清掃を行い、のり面の降雨が適切に捕捉されるよう維持管理を行うことが有効であると考えられる。
今回の現場では小段の排水の延長が130m程度であるが、小段の延長が非常に長くなる場合には、縦排水の間隔があまり大きくなりすぎないように計画することも必要である。今回取り上げた植物による閉塞以外にも、のり面が経年的に変状をきたした結果、小段の縦断勾配が変化し縦排水の中間地点で滞留溢水が発生し、のり面の浸食崩壊を引き起こした事例もあるので注意が必要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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