〈建設ディレクター
  現場を支える新しい働き方〉

2026/07/01

女性が活躍できる、頼れる〝机上の現場職〟/
現場の利益に貢献めざす

中部土木(愛知県名古屋市)

昭和38年(1963年)の設立以来、土木、舗装工事を主体に事業を拡大してきた中部土木株式会社(愛知県名古屋市)。名古屋市を中心に中部エリアで主に元請けとして、豊富な施工実績をもっています。

同社は1990年代に、女性活躍の一環として、CADの図面修正や工事測量の補助を担う現場支援(CSL:Consruction support lady)職を設けた先駆者でもあります。当時は旧来の価値観の更新が難しく定着しませんでしたが、いわゆる建設業冬の時代を経て、生産性向上や施工管理業務の支援拡大などを目的に、平成28年(2016年)6月に「CSL」を復活。「施工管理課」を立ち上げ、本社による書類支援と、現場事務所に常駐して支援する取り組みに着手しました。当初は5名のCSL職員を配置したものの文系出身の社員が大半で、現場経験や専門知識の不足から本人も現場も満足のいく結果にはならなかったそうです。

その後、CSLによる現場支援を本格的に軌道に載せるため、堀江真由美執行役員DX推進部長の提案により、令和3年(2021年)に自ら先陣を切って建設ディレクターの資格を取得。今回お話を聞いた豊岡万希子さん(事業支援本部業務効率推進部主任)もこれに続きます。その後、現場支援業務を経験した1、2年目の女性社員も続々と資格を取得し、現在は事業支援本部内に総勢9名(うち1名は東京支店所属)の建設ディレクターが在籍し、主に本社から複数現場を支援して活躍しています。堀江部長は「CSLはもともと建設ディレクターのような働き方をしていましたが、資格として認められたことで、初めて名前が付き、社内外で立場が確立された」と手ごたえを語ります。「技術者とのコミュニケーションという課題はありますが、支援という枠を超えて施工管理者の頼れる存在になり、企業の利益に貢献できる、稼げる組織を目指しています」と目標が明確化してきました。女性が活躍できる〝机上の現場職〟として33年前に考案したCSLが着実に定着しつつあります。

今回は、堀江さん、豊岡さんのほか、業務効率推進部に所属する建設ディレクターの森円香さん、DX推進部でCAD、BIM/CIMなどに携わる代名桜子さん、谷口弘倫取締役工事本部長にもお話を聞きしました。

写真1:DX推進部の堀江真由美部長(上段向かって右)ほか、建設ディレクターの皆さん 写真1:DX推進部の堀江真由美部長(上段向かって右)ほか、建設ディレクターの皆さん

これまでのキャリアと、建設ディレクターを選んだきっかけ、今の仕事内容を教えてください。

豊岡: 大学時代に文学部で学び、漠然と事務職に就きたいと思い就職活動をしていました。平成28年(2016年)に新卒で当社に入社し、当時の「CSL」として現場支援の仕事に携わることになりました。入社当初は1つの現場に常駐していましたが、その頃から支援する内容自体はあまり変わっていません。現在は基本的に本社からの支援ということで、請負関係書類の整理、施工体制台帳の作成、施工計画書(変更)の作成、工事打合せ簿の提出・施工、出来形管理・品質管理資料の作成、工事写真管理、電子小黒板作成、創意工夫ネタの収集・提供、産廃契約書(電子・紙)、電子契約一覧表作成、マニフェスト関係の手続き(電子・紙)、建退共関係の書類整理・管理、CCUS 関連、現場巡回チェック、検査指摘事項の更新などを担当しています。

写真2:豊岡さん 写真2:豊岡さん

写真3:森さん 写真3:森さん

森: 文系学部を卒業後、事務職を希望して当社の会社説明会に参加したところ、デスクワークだけでなく現場に出向いて業務を行う「現場支援」という仕事があることを知りました。現場の方とコミュニケーションをとりながら働けるという点に魅力を感じ、令和元年(2019年)に入社しました。入社後3年間は、現場事務所に常駐して1つの現場を専属で支援しました。令和5年(2023年)10月には建設ディレクターの資格を取得し、現在はおよそ5,6か所の現場を受け持ち、豊岡さんと同様に本社から、写真管理、施工体制台帳の作成、産廃の契約・登録処理業務などの支援を担当しています。高速道路の補修集中工事に参加し、工事部の人と一緒に現場で写真を撮ったり、舗装の流れを勉強しながら温度管理をするなど、いわば作業員かつ監督のような業務も経験しました。現場で密にコミュニケーションをとり、ともに汗をかく、現場での貴重な経験があったからこそ、類似工事の書類作成依頼を受けると「やりやすいな」と感じます。

写真4:代名さん 写真4:代名さん

代名:もともと大学のデザイン学部で、3D制作のスキルが土木の世界でも通用するのではないかと思い、建設ディレクターという仕事に興味をもちました。令和5年(2023年)に入社し、DX推進部に配属となりました。令和6年(2024年)10月には建設ディレクターの資格を取得。地上型レーザースキャナー(TLS)を使った測量補助、設計データ・出来形データ・出来形帳票の作成、電子納品データ作成、点群データ作成、CIMデータ作成、2DCAD全般を担当しています。二等無人航空機操縦者技能証明も取得したことで、ドローン現場撮影にも携わっています。また、CIM、点群データを活用した安全教育用のアニメーション、施工シミュレーションも作成するなど、業務は多岐にわたります。建設業界は専門的なことが多く、学生時代に建設に関して学んでいなかった自分がついていけるのか、とても不安でしたが、入社後は業界に関して基本的なことを1から丁寧に教えてもらえました。土木はプロダクト系より規模が大きいためデータ作成にも時間がかかりますが、そう簡単にはいかないところがおもしろく、やりがいがありますね。

仕事の楽しさ、やりがい、建設ディレクターを選んでよかったこと

豊岡:建設ディレクターだからというのではなく、建設業で仕事を続けることができてよかったと常に感じます。舗装、土木、電線共同溝工事、これまで携わった現場は数十あり、様々なインフラを支えるスケールの大きな仕事に携わることができます。最近では3歳の息子が建設機械に興味を持ち始めたのですが、今何をしているかまで専門用語を使って工事内容を楽しく説明できることが自慢です。

写真5:これから産休・育休を取得するが「子育てしながらでも、デスクワークが中心で無理なく働き続けられることが魅力」と豊岡さん。 写真5:これから産休・育休を取得するが「子育てしながらでも、デスクワークが中心で無理なく働き続けられることが魅力」と豊岡さん。

森:書類作成支援や現場担当者として現場に関わった高速道路を休日に車で通る時、家族や友人に、地図に残る仕事に関われていることを紹介できることにやりがいを感じます。建設ディレクターも現場担当の一員。建設ディレクターとして携わった現場の施工銘板に当社の名前が見えるととても嬉しいですね。

代名:設計段階から図面やデータ作成を通じて関わってきたものが、実際に現地に行った際に目の前に〝本物〟として完成していることが毎回感慨深いです。

建設ディレクターがもたらす効果は

谷口:毎年受注している掘削跡復旧工事で、建設ディレクターの皆さんに1年間、現場事務所に常駐してもらいました。図面作成、数量計算、写真整理など、現場監督が現場作業終了後に行っていた書類作成業務が、現場作業の進捗と同時に完結していくスタイルを確立できました。これにより作業所全体の業務効率化が進められました。現場の負担軽減、作業の効率化による就労時間の短縮という効果だけでなく、何より、現場監督を志望する10代、20代の若手社員に対して、建設ディレクターの皆さんが一緒に書類作成業務に携わって指導してくれたことで、書類作成業務を習得でき、次年度から現場監理業務へもスムーズに移行できました。こうした教育指導的な効果も大きいですね。

写真6:現場巡視で現場代理人(向かって左)と状況確認する森さん。現場を訪問し、現場の状況や困りごとを確認し、現場支援に反映させる体制をとっている。 写真6:現場巡視で現場代理人(向かって左)と状況確認する森さん。現場を訪問し、現場の状況や困りごとを確認し、現場支援に反映させる体制をとっている。

また、10代、20代の新入社員(技術者)研修にも講師として来てもらっています。写真管理システムの講習、出来形管理・品質管理資料の作り方、写真の撮り方だけでなく、CADの講習など、幅広く〝先生役〟を担ってくれています。こうした「入口」の講習だけでなく、入社1~5年目の技術者を対象にした3か月に1度の講習会でも建設ディレクターが先生役をしてくれます。日々の現場の経験を生かして、新入社員研修をさらに実践的な内容にし、理解していないポイントの改善につながると好評です。

写真7:イラストを活用したイメージアップ看板のデザインも代名さんが担当。分かりやすいデザインが近隣住民に好評で、無機質な現場に彩りを添えてくれる。ある日現場で看板を見ている人に声をかけると、こんな風に新しい道になるんだね、と「看板と現場を眺めていってもらえてうれしかった」と振り返る代名さん。 写真7:イラストを活用したイメージアップ看板のデザインも代名さんが担当。分かりやすいデザインが近隣住民に好評で、無機質な現場に彩りを添えてくれる。ある日現場で看板を見ている人に声をかけると、こんな風に新しい道になるんだね、と「看板と現場を眺めていってもらえてうれしかった」と振り返る代名さん。

今後の目標、課題、大切に考えていることは

豊岡:現場に常駐していたころと異なり、建設ディレクターとして本社からの支援となることで、現場技術者とのコミュニケーションが課題の一つとなっています。当社工事の受注ベースは土木6、舗装4割程度。基本が電話とメール連絡であるために、質問が食い違ってしまうこともあります。聞き直すことに躊躇することも多いのですが、結局「忙しければ出ないだろう」と開き直って明るく電話をすることにしています。当社の現場技術者はおよそ90人。入社11年目にもなると「この人はこういう性格だから」といった個々の事情もよく分かるため、若い建設ディレクターに、そうした情報を共有することもあります。

森:電話やメールでのやりとりによる勘違いで手戻りが発生したことも。言葉足らずだったことを反省し、言葉選びに気を付けながら、ビデオ通話や画面共有を活用しています。工事部の負担が減るよう、やってほしいと思うことを頼まれる前に先回りして支援できるようになりたいと思います。

代名:Webでのリアルタイム接続で図面やデータを見せながら、質問をしたり業務の依頼を受けるのが基本。できるだけ細かくメモを書いてスクリーンショット画面を活用したり、画面越しで相手と同じ画面を開いたり、わかりやすく伝えることを意識しています。足元ではAIの導入を始めたところですが、建設技術展などにも積極的に足を運ぶなど、現場の技術者の負担を軽減できる新しいDXの知識や技術を、どんどん身に着けたいです。

文系の学部卒で、「法長という用語の読み方さえ知らない状態でした」と入社当初を振り返る豊岡さん、森さん。入社後に現場事務所で経験を積み、お二人とも数年前に1級土木施工管理技士の資格を取得されたそうです。いまではその経験を生かして新人技術者さんの教育的側面も担うほど仕事の幅を広げており、従来の建設ディレクターという業務の枠にとどまらないイメージを築いています。また、これまで外注していたものを内製化しているというイメージアップ看板の取り組みも中部土木ならでは。ここ最近は代名さんがどんどんデザインの腕を上げ、現場担当者の似顔絵を描き加えるのも上手になり、社内外で評判になっているそうです。業界に対するイメージアップにもつながりそうです。

新着記事

令和の時代の新しい安全対策

2026/07/01
【特別寄稿】熱中症災害を防止するには -厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」解説など-

現場の失敗と対策

2026/07/01
コンクリート工事 1)打設中(コンクリートの特性とクラック) ボックスカルバート側壁の温度ひび割れ対策の一事例

コラム

2026/07/01
修正CBRと設計CBRについて考える

現場探訪/話題の現場

2026/07/01

交通誘導AIシステム「ゆうどうくん」~無人でも現場は止まらない—次世代の交通誘導へ~

近年、建設現場では、人手不足の深刻化と安全対策強化が大きな課題となっています...

建設ディレクター

2026/07/01
女性が活躍できる、頼れる〝机上の現場職〟/現場の利益に貢献めざす/中部土木(愛知県名古屋市)

トピックス

2026/07/01

全国各地で建設技術展

ことしも全国各地で建設技術の展示会が開催されます。当センターも、『建設技術フェア2026 in中部』(令和8年...

今月の一冊

2026/07/01

建設業しんこう別冊『FOCUS Teacher‘s VOICE』

一般財団法人建設業振興基金が発行する「建設業しんこう」では、令和元年(2019年)4月号から全国の工業高校の教育現場で活躍する先生のインタビューを掲載する「FOCUS」を連載している...