
コンクリート工事
コンクリート工事
1)打設中(コンクリートの特性とクラック)
2026/07/01
近畿地方の内陸部において、道路盛土部を横断する鉄筋コンクリート製ボックスカルバートを施工した(図-1,2)。
ボックスカルバートの寸法は高さ5.7m×幅5.1mで、底版の厚さが0.9m、側壁と頂版の厚さが0.8m、1スパンの長さが13.2mであった。このボックスカルバートを5スパン施工した。施工時期は秋から冬にかけての施工であった。コンクリートの打込みは、底版(1ロット)を施工したあと、約2か月後に側壁と頂版を同時に施工(2ロット)する計画であった。
コンクリートの当初の配合仕様は30-12-20BBで、単位セメント量は316kg/m3であった。
この施工にあたり、とくに側壁の厚さが0.8mと大きいことから、硬化した底版コンクリートに拘束されることによる温度ひび割れが懸念された。そこで、事前に温度応力解析を行った結果、ひび割れ指数が1.0、ひび割れ発生確率が50%となった。
事前の温度応力解析の結果を受けて、施工者として高い品質の構造物をつくるために適切な対策を実施することが重要と考え、発注者と協議した結果、スパン①~③を対象に、比較的導入しやすく効果が高いと思われた「膨張材の使用」と「補強鉄筋(ひび割れ制御鉄筋)の設置」について試験的に実施することとなった。このほかに高性能AE減水剤などを用いた単位セメント量の低減も考えられたが、生コン製造プラントと相談した結果、今回の配合条件に対してはあまり実績がないことから採用を見送った。
対策は、スパン①で「膨張材の使用」(水和熱抑制型膨張材20kg/m3をセメントに置換)1)、スパン②の片方の側壁で「補強鉄筋の設置」(設置した断面の鉄筋比を0.16%から0.41%に増加)、スパン③は比較のため「無対策」とし、参考として対策の効果を評価するために、スパン①と③で温度応力の計測を、スパン②で鉄筋ひずみの計測を行った。スパン①~③で実施した対策一覧を表-1に示す。ここで、スパン①と③の側壁・頂版コンクリートは同日に打ち込んだ。
| No. | 対 策 | 備 考 |
|---|---|---|
| スパン① | 膨張材の使用 | 水和熱抑制型膨張材20kg/m3(側壁部のみ) |
| スパン② | 補強鉄筋の設置 |
片側の側壁でのみ実施 壁部厚さ80cm、高さ100cmの範囲に対して、 当初:D13×10本 (鉄筋比0.16%) 補強:D13×10本+D13×16本 (鉄筋比0.41%) |
| スパン③ | なし(比較用) |
スパン①~③における試験的な対策実施の結果、①~③のすべてのスパンで、側壁にひび割れの発生は確認されなかった。
そして、スパン①と③における温度応力の計測の結果、スパン③のコンクリートの温度応力(引張応力)は想定された引張強度に比較的近かったが、スパン①での「膨張材の使用」により引張応力を約30%低減することができた。
また、スパン②の片側の側壁における「補強鉄筋の設置」によって、補強鉄筋を設置した側壁の鉄筋ひずみ(引張ひずみ)は補強鉄筋を設置していない側壁のそれよりも約70%小さくなり、仮にコンクリートにひび割れが発生するレベルの引張ひずみに至ったとしても、ひび割れは分散される(複数の幅の小さいひび割れが発生する)ものと考えられた。なお、この引張ひずみの低減率(約70%)は、鉄筋による補強効果(鉄筋比の増加率に応じてコンクリートのひずみが拘束されるとすると、ひずみは0.16/0.41=39%に低減され、低減効果は61%となる)に見合う程度のひずみ低減効果はあったと思われる。
よって、「膨張材の使用」はひび割れ抑制の、「補強鉄筋の設置」はひび割れ幅制御の効果が期待できるものと考えられた。この結果を踏まえてスパン④と⑤の対策について発注者と協議した。結果的には、スパン①~③でひび割れが発生しなかったこともあり、コンクリートの品質の面からスパン④と⑤でもひび割れを発生させないことを優先して、「膨張材の使用」による温度ひび割れ抑制対策を自主的に実施し、ひび割れのない良質な構造物を構築することができた。なお、対策コストは補強鉄筋による対策の方が安くすむが、前記の理由から膨張材による対策を実施した。
今回の施工事例では、典型的な壁部材の温度ひび割れが秋から冬にかけての施工において発生する可能性を踏まえて、事前の対策検討を行って施工した事例を紹介した。
一般に、マスコンクリートにおける温度ひび割れの発生に対しては、その対策レベル(ひび割れをどの程度制限したいか)に応じたひび割れ発生確率と安全係数(温度ひび割れ指数)を満足しているか否かを解析的検討によって照査し、必要な対策を検討するのが一般的である。この安全係数は、コンクリートの打込み時期、構造条件、および施工条件などに応じた温度応力解析を行って算定することができる。今回もそのような解析による検討を実施した。
温度ひび割れ対策は、構造物の形状・寸法、拘束の条件・程度、コンクリートの配合、および施工環境などの種々の条件に応じて適切に選定する必要がある。対策には様々なものがあるので、例えば下記の参考記事1)を参照されたい。
なお、今回の事例では、余裕をもって事前の温度応力解析に基づく検討を行ったため、膨張コンクリートの試験練りなどによる品質確認を行うことができた。また、補強鉄筋の配置は、ひび割れを分散させてその幅を小さくするひび割れ幅の制御手法ではあるが、比較的採用しやすい対策である。このほか、壁部材であれば、ひび割れ誘発目地を設置してひび割れ発生位置を制御する方法も比較的採用しやすい対策かと思われる。もちろん、このほかにも様々な対策が考えられるが、工事の工程の関係から必要な対策が採用できなければ、対策を検討した意味がなくなる。十分な検討を行って、実際に適切な対策を実施するためにも、早めに温度ひび割れが発生しそうな施工条件かどうかを判断することが肝要である。
1) デンカ株式会社HP:特殊混和材製品特設ページ,膨張材デンカパワーCSA,
https://denka-tokkon.jp/product/501
1)(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,カルバートボックスの温度ひび割れ対策の比較事例(2019/09/26),https://concom.jp/contents/countermeasure/vol006/,2019年9月
2)(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策,既設コンクリートの嵩上げ部にひび割れが発生!(2022/07/01),https://concom.jp/contents/countermeasure/vol045/,2022年7月
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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