
基礎工事
基礎工事
3)既製杭
2026/08/03
河川工事において、大型ブロックで構築された既設護岸に近接する範囲で函渠工の基礎杭の施工を行った。既設護岸と基礎杭の距離は約2.0m、基礎杭は既製コンクリート杭φ500mm、杭長L=12.0mであった。
施工箇所の地層は、杭の施工基面(GL)から-2.0mまではN=4程度の盛土、GL-2.0m~-14.0mはN=0~3の沖積粘性土層、GL-14.0m以深はN=30の細砂であり、この細砂を支持層としていた。盛土部は杭打機の施工に必要な地耐力が確保されていなかったため、施工基面から深さ1mの範囲で表層改良を行い、敷き鉄板を設置して杭打機の地耐力を確保した。
基礎杭の施工により、近接する既設護岸の変状の発生が懸念されたため、削孔と杭の沈設を同時に行い、低振動で施工できる中掘り根固め工法を採用した。
試験杭として最初の1本目の杭の施工時、既設護岸の天端に観測点を設けて平面位置と高さを計測し、挙動を管理しながら杭の施工を行っていたが、杭をGLから約10mの深さまで沈設した段階で既設護岸が河川側に約5cmの変状が確認されたため、杭の施工を中断した(図-1)。
既設護岸における変状の発生については、杭の施工方法に問題があったと考えられた。施工方法を検証すると、沖積粘土層が非常に軟弱で杭の掘削・排土を行うと杭が過大に自沈するため、排土を抑制して杭を沈設していた。このため、杭の沈設に伴う地盤の体積変化によって既設護岸には河川側への土圧が作用し、これにより既設護岸に変状が発生したものと考えられた。
この対策として、掘削・排土時に杭を吊り上げながら掘削し、杭の過大な自沈を防止した。また、沖積粘土層における掘削・沈設速度を2.0m/分から1.0m/分以下に下げ、杭の沈設深さと先行掘削0.5mに応じた排土が行われていることを確認し、沈設速度と排土量のバランスを確保した。この対策により、以降は既設護岸に変状を発生させることなく、杭の施工を完了させることができた。
杭の掘削・沈設速度は杭径や土質条件によって異なるが、杭基礎施工便覧には一般的な掘削・沈設速度の目安が示されている(表-1)。また、同書では「軟弱地盤での施工で、排土を十分に行わずに過度な速度で沈設すると、地盤を横方向に押し拡げて隣接杭や近接構造物に変状を与えることもあるので注意が必要である」と記載されている。
| 土質 | 掘削速度(m/分) |
|---|---|
| シルト、粘土、緩い砂 | 0.5~4 |
| かたい粘土、中密な砂 | 0.5~3 |
| 密な砂、砂礫 | 0.5~2 |
排土量の管理については地盤の条件によって大きく異なるため、既製コンクリート杭中掘り工法における排土量を具体的に示した文献はないが、軟弱地盤や近接構造物がある条件で杭を施工する場合は、試験杭の段階で杭の沈設深さと先行掘削0.5mに応じた排土量の関係を把握し、本施工で試験杭のデータに基づいた排土量の管理を行うことが望ましい。
排土が十分に行われていない状態で杭の沈設を進めると、周辺の構造物や既施工の基礎杭にも影響を与える可能性があり、施工中の杭体が破損することもある。中掘り工法による既製コンクリート杭の施工において、近接構造物の変状を防止するためには、地盤条件に応じた杭の適切な掘削・沈設速度の設定と排土のバランスが重要である。
1)日本道路協会:杭基礎施工便覧 令和2年9月
1)(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策「軟弱地盤の偏土圧で杭芯にずれ」(2016/04/27)
https://concom.jp/contents/countermeasure/basic/cat03_vol9.html
2)(一財)建設業技術者センターHP,現場の失敗と対策「既製コンクリート杭の杭心ずれと近隣構造物の変状」(2017/10/30)
https://concom.jp/contents/countermeasure/basic/cat03_vol13.html
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