コラム:編集委員の独り言…

「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
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2026/08/03

国土交通省の土木工事で取り組む“脱炭素アクションプラン” ~ターゲットは建設機械と建設資材からの排出削減~

2025年4月に、建設現場のカーボンニュートラルに向けて、国土交通省大臣官房技術調査課から、“国土交通省土木工事の脱炭素アクションプラン”が公表されました。これは、まさしく直轄土木工事で取り組む脱炭素化に向けた行動計画です。この取組みはこれから本格的に実施されるところですので、本コラムでは、土木技術者あるいは建設事業に関わる企業として脱炭素化にどのように取り組むのがよいかを考える参考のため、この制定に至る経緯とその概要を紹介します1)

脱炭素アクションプランの制定に至る経緯

地球温暖化による気候変動の影響が顕著となる中、2015年のCOP21で採択された国際的な気候変動対策の枠組みであるパリ協定を踏まえ、2020年10月に当時の菅義偉首相が、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を宣言しました。その後、温室効果ガス排出削減(脱炭素化)と経済成長の両立を図りながら、経済・社会全体の変革を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)を推進するための政策体系の整備が進められています。なお、これ以降は、代表的な温室効果ガスであるCO₂の排出削減(脱炭素化)として話を進めます。

2024年6月には公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)が改正され、公共工事では経済性に配慮しつつ、脱炭素化への寄与の程度を考慮して、総合的に価値の高い資材や工法等を適切に採用していくという方針が明確化されました。

我が国のCO₂排出量のうち、インフラ等の整備(建設機械からの排出や主要資材の製造・輸送による排出)が約13%、インフラ等の運用(道路利用や鉄道・船舶・航空輸送、家庭やオフィス等の使用による排出)が約49%を占めており2)、インフラ分野での脱炭素化への取組みは非常に重要となっています。

そこで、インフラ等の整備にかかる脱炭素化のため、直轄土木工事において先進的に取り組むことで、建設現場全体の取組みをけん引すべく、CO₂排出の過程(資材製造時~施工段階の各過程)に応じたリーディング施策のロードマップが定められました。

脱炭素アクションプランとリーディング施策

直轄土木工事における主要なCO₂排出過程としては、以下の2つに分けられます。

  • A) 建設現場でエネルギーを消費し、直接的にCO₂排出に関わる建設機械(Scope1,2)
  • B) 製造過程等でエネルギーを消費し、建設現場が間接的に排出に関わる材料等(Scope3)

よって、品確法や政府計画(GX2040ビジョン、地球温暖化対策計画)を踏まえ、建設現場の脱炭素化を推進することとし、上記のAとBを対象に、図-1に示す3つのリーディング施策(①~③)が掲げられています。

  • A) 建設機械における脱炭素化
     ①建設機械の脱炭素化として、電動建機(GX建機)や次世代燃料の活用
  • B) 材料・製品の製造過程等における脱炭素化
     ②コンクリートの脱炭素化として、低炭素型コンクリートの使用原則化
     ③その他建設技術の脱炭素化として、技術開発が進んでいる低炭素技術の導入環境整備
図-1 カーボンニュートラルに向けたリーディング施策

図-1 カーボンニュートラルに向けたリーディング施策

ここでは、①建設機械の脱炭素化②コンクリートの脱炭素化に関する施策の詳細について紹介します。なお、③その他建設技術の脱炭素化については、低炭素材料等にインセンティブを与える方法を検討中とされています1)

建設機械の脱炭素化

建設機械の脱炭素化に関するロードマップを図-2に示します。

ここでは、建設機械の燃費性能の向上を促進しつつ、2030年度を目途に燃費基準達成建設機械の使用を油圧ショベルから原則化し、また、電動建機(GX建設機械)の電費性能向上を促進しつつ、普及・導入促進を図ることとされています。合わせて、次世代燃料等の活用をモデル工事等により促進することとされています。具体的には、2025年度からGX建設機械活用推進工事が、またゼロエミッション促進モデル工事(バイオ燃料などの次世代燃料を軽油代替燃料として使用)が実施されています。

さらに、ICT施工や建設現場のデジタル化・見える化、チルトローテータ(バケットを傾け、回転させることのできる油圧ショベル用先端アタッチメント3))等の新たな施工技術の活用による施工の効率化を図ることにも取り組むこととされています。

2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画においては、産業部門のエネルギー起源CO₂排出量の目安を2040年時点で▲57%~61%(2013年比)としています。そこで、直轄土木工事での建設機械からの排出量についても、軽油代替燃料の活用促進、エネルギー効率の高い建機の活用促進、新技術等による施工の効率化の促進等を図ることにより、2040年において上記と同程度の約6割削減(2013年比)を目安とするという数値目標が掲げられています。

現状においては、建機や次世代燃料の供給・調達の問題、コスト増や費用負担の問題、施工能力(施工効率)の低下の問題など、様々な課題がありますが、建設産業全体の問題として取り組んでいく必要があると思います。

図-2 建設機械の脱炭素化に関するロードマップ

図-2 建設機械の脱炭素化に関するロードマップ

コンクリートの脱炭素化

コンクリートの脱炭素化に関するロードマップを図-3に示します。施策には大きく2つあり、CO₂排出削減とCO₂吸収源増に関する取組み方針が示されています。

CO₂排出削減は、セメント代替材料の使用等(使用するコンクリートのセメント混合割合を45%以下とし、高炉スラグ微粉末に置き換えるなど)によって、CO₂排出量の大きい原料の使用を抑制するものです。用途等を指定して2030年までには使用を原則化し、順次対象を拡大、その後は排出削減割合を順次引上げることとされています。高炉セメントC種の活用、高炉スラグやフライアッシュ等の混和材の置換率を高めたコンクリートなどの活用が推進されるものと考えられます。

CO₂吸収源増は、CO₂を固定した炭酸塩原料を用いた骨材や混和材の使用、炭酸化養生中のCO₂吸収などの技術の導入により、CO₂吸収源としてのコンクリートの活用を促進するものです。当面は、試行による適用範囲・供給体制・費用対効果の検証を行い、いずれは用途等を指定して使用を原則化し、順次対象を拡大することとされています。こちらも、コンクリートがCO₂吸収源として社会に貢献する機会として、技術開発の進展と早期の実用化が期待されます。

図-3 コンクリートの脱炭素化に関するロードマップ

図-3 コンクリートの脱炭素化に関するロードマップ

ここからは私見ですが、コンクリートはこれまで、社会の様々なニーズに合わせて新たな性能を付与すべく技術開発がなされ、インフラを適切に整備するための多種多様な用途に用いられてきました。このニーズは今後も変わらないものと思います。一方、近い将来、コンクリートの新しい役割(性能?)として、CO₂排出の少ないコンクリートやCO₂を吸収するコンクリート(吸収するタイミングは打設の前後を問わず)を使用することが主流となり、それを前提として、前述のニーズに応えていかねばならないことになるでしょう。そういう意味では、コンクリートの研究者・技術者が取り組むべき技術課題は尽きないように思われます。もちろん、技術課題以外にも、セメント・コンクリート産業全体としての代替材料の供給・調達やコスト増といった構造的な課題も大きく横たわっています。

今後、人口減少が進む日本社会において、どのように優先順位をつけて取り組むのか、知恵の見せどころというと他人事のようで恐縮ですが、難しい問題であるのは間違いありません。少なくとも、技術を開発する側も、開発された技術を使う側も、脱炭素化に向けて新しく開発されたコンクリートがどういうコンクリートなのかを十分に理解したうえでインフラ整備に活用していかねばならないと思います。

参考文献

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