コラム:編集委員の独り言…

「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。

2026/09/01

場所打ち杭の鉄筋かごの組立方法について

1.場所打ち杭の鉄筋かごについて

土木工事・建築工事における場所打ち杭では、鉄筋かごが用いられています。鉄筋かごは、場所打ち杭の施工前に現場内または現場から離れたヤードであらかじめ組立を行っておき、場所打ち杭の施工箇所に運搬・仮置きし、杭の掘削完了後にクレーンで孔内に設置した後にコンクリートを打設して場所打ち杭を施工します。

鉄筋かごは、組立時および組立完了後は横方向に仮置きし、クレーンで横方向のままで吊り上げて運搬車両に積み込んで運搬し、掘削後の孔内に設置する時はクレーンで引き起こし、鉛直方向に吊り上げます。孔内に設置した後は、鉄筋かごにはその全自重が作用します。また、コンクリート打設時は鉄筋かごにコンクリートの重量や側圧が作用します。このため、鉄筋かごはいずれの状態でも変形しないように堅固に組立を行う必要があります。

現在、この鉄筋かごの組立には無溶接工法が多く用いられていますが、かつては鉄筋かごの軸方向鉄筋と帯鉄筋・補強材との固定は点付け溶接によって行われていました。

2.鉄筋かごの組立方法の変遷

平成24年(2002年)に道路橋示方書・同解説1)(以下、道示)が改定され、Ⅳ下部構造編「鉄筋かごの製作及び建込み」において、鉄筋かごの組立で行われていた軸方向鉄筋と帯鉄筋における点付け溶接の禁止が明記されました。

これ以降、道示は平成29年と令和7年に2回の改定がありましたが、現在は「鉄筋の組立てにおいては、組立て上の形状保持等のための溶接を構造設計上考慮する鉄筋に対して行ってはならない」と記述されています。

図-1に鉄筋かごの組立例を示します。「構造設計上考慮する鉄筋」とは、鉄筋かごの軸方向鉄筋と帯鉄筋であり、軸方向鉄筋の内側に設置する補強材、浮き上がり防止のために鉄筋かごの底部に設置する井桁鉄筋、スペーサー等は含まれません。

道示の改定に伴い、溶接に代わる新たな鉄筋かごの組立方法として後述する無溶接工法が広く用いられるようになり、現在に至っています。

図-1 鉄筋かごの組立例

図-1 鉄筋かごの組立例

3.なぜ鉄筋かごで点付け溶接が行われていたのか

通常の鉄筋コンクリート構造物において、鉄筋組立時の固定には結束線やなまし線が用いられています。構造物の構築場所で組立を行う通常の鉄筋とは異なり、鉄筋かごは杭の孔内に鉛直方向に設置するため、構築場所での組立ができません。

また、前述の通り鉄筋かごは横方向、鉛直方向に吊り上げを行い、仮置きや運搬、設置を行うとともに、設置後は打設するコンクリートの荷重に耐える強度が必要とされるため、鉄筋かごは様々な荷重に耐えられるように堅固に組立を行い、剛性を確保する必要があります。

一般的な構造物と同様に結束線やなまし線等で組立を行うと鉄筋かごの剛性の確保が難しく、鉄筋かごの吊上げ時や設置時、コンクリート打設時に変形や座屈等のトラブルが発生したため、この対策として軸方向鉄筋と帯鉄筋、補強材との全ての交点を点付け溶接で固定する方法が主流になったものと考えられます。

また、鉄筋かごは結束箇所が多く、結束線等による固定より点付け溶接の方が効率的に鉄筋かごの組立を行うことができた、という理由もあったかもしれません。

4.なぜ鉄筋の点付け溶接が禁止されたのか

鉄筋かごの製作において、構造設計上考慮する軸方向鉄筋と帯鉄筋に対して点付け溶接が禁止された理由として、道示には「施工品質の確保が困難であり鉄筋の断面減少等の欠陥が生じるおそれがあるため」とされているとともに、「溶接による仮止めは、局部的に急加熱、急冷することで鉄筋の材質劣化や断面減少(アンダーカット)等の欠陥が生じるおそれがあることから、この可能性を排除することで杭体の剛性や耐力が低下しないようにするためである」と説明されています。

鉄筋を溶接すると、溶接時の高熱によって鉄筋の金属組織が変化し、溶接熱影響部が生じます。溶接熱影響部では、鉄筋の降伏点と引張強度が低下するとともに、靭性が低下(脆化)します。

このため、溶接熱影響部では粘り強さが低下し、大きな外力が加わると伸びたり曲がったりという塑性変形を伴わず、突然破断する「脆性破壊」が発生するリスクが高まります。

また、溶接箇所は鉄筋の形状と材料的な性質が変化するため、応力集中による疲労破壊の原因になることが知られています。

平成7年(1995年)の阪神淡路大震災や平成23年(2011年)の東日本大震災では、損傷を受けた構造物において鉄筋の溶接に起因する脆性破壊が確認され、溶接による鉄筋の性能低下が広く認識されるようになり、場所打ち杭の鉄筋かごに対しても溶接が禁止されることになりました。

5.鉄道構造物における鉄筋かごの組立方法

鉄道構造物における鉄筋かごについて、「場所打ち杭設計施工の手引き」2)を参照すると、平成31年(2019年)の改定で鉄筋かごの軸方向鉄筋と組立用鋼材(上記の補強材と同じ部材、筆者注)・帯鉄筋との点溶接(点付け溶接、同)の禁止が明記されています。現在では「鉄筋かごの組立ては、杭体の耐力および変形性能を低下させることが無いよう、適切な方法により行う必要があるため、点溶接を用いてはならない」と記されています。軸方向鉄筋に溶接を用いると降伏後の鉄筋の伸びの低下、変形性能が十分に発揮されなくなることを理由としています。

また、点付け溶接が禁止される以前から、杭体で塑性化が生じる(損傷レベル2以上となる)範囲では鉄筋の変形性能を確保する必要があるため、「溶接を行ってはならない範囲=溶接禁止区間」として設計図面上に明記するものとしています(図−2)。

軸方向鉄筋と帯鉄筋は溶接禁止区間の内外を問わず、結束線または固定金具による固定方法とし、溶接は行わないこととしています。

溶接禁止区間の外では、軸方向鉄筋と補強材の全交点をフレア溶接で固定することを基本としていますが、フレア溶接は溶接作業時の条件や外観および形状検査等の施工管理・品質管理項目が多く、品質を確保するための管理が非常に大変であることから、現在では後述する無溶接工法を使用することが多いと思われます。

図-2 軸方向鉄筋への溶接を禁止する区間の記載例(一部追記)2)

図-2 軸方向鉄筋への溶接を禁止する区間の記載例(一部追記)2)

6.無溶接工法による鉄筋かごの組立方法

鉄筋かごの組立方法として、現在主流となっている無溶接工法について説明します。無溶接工法は「場所打ちコンクリート杭の鉄筋かご無溶接工法 設計・施工に関するガイドライン」3)に詳述されています。

鉄筋かごの組立時に設置する補強材は、補強鉄筋として円形加工したD22程度の鉄筋を使用する場合と平鋼・等辺山型鋼等の形鋼を円形加工した補強リングを使用する場合があります。補強材に鉄筋を使用する場合、無溶接金具と呼ばれる部材により、鉄筋かごの軸方向鉄筋と補強材として用いる異形鉄筋を固定します。形鋼を使用する場合、形鋼はフレア溶接で固定し、Uボルトを使用して軸方向鉄筋を固定します(図-3)。

杭基礎施工便覧4)では、「無溶接による補強には、平鋼や形鋼が使用されていることが多く、特に杭径2,000㎜以上の杭では形鋼が使用されることが多い」、とされています。

また、固定金具は、「軸方向鉄筋と補強材(補強リング)の固定、スペーサーの取付け等には、固定金具が使用されることが多い。(中略)軸方向鉄筋と補強材との固定にはUボルト等の固定金具が用いられることが多い」と記述されており、最近では剛性の高い形鋼とUボルトの使用例が増えていると思われます。

図-3 補強材に平鋼、固定金具にUボルトを使用した例3)

図-3 補強材に平鋼、固定金具にUボルトを使用した例3)

点付け溶接が禁止された直後は、場所打ち杭の施工時における鉄筋かごの変形や座屈等のトラブルが多く発生しましたが、現在では、無溶接工法による鉄筋かごの組立方法が確立され、こうしたトラブルはかなり少なくなりました。

7.おわりに

近年増加している更新工事や災害復旧工事では、対象となる構造物が施工・供用開始から相当の年月が経過していることが多いと思われます。年月が経過している構造物は当時の設計基準に基づいて設計・施工されているため、当時の設計基準や施工がどのように行われていたかを知ることは非常に重要であると思われます。

また、無溶接工法による鉄筋かごの組立方法は確立され、施工実績も増加しましたが、鉄筋かごの品質トラブルが発生する可能性が全く無くなった訳ではありません。設計図書や前述のガイドライン等に基づき、鉄筋かごの配筋図、補強材の配置等を十分に検討し、トラブル発生の可能性がないかを十分に確認する必要があります。

参考文献
  • 1)日本道路協会:道路橋示方書・同解説(令和7年改訂版) Ⅳ下部構造編
  • 2)鉄道建設・運輸施設整備支援機構:場所打ち杭設計施工の手引き
  • 3)(一社)日本基礎建設技術協会 場所打ちコンクリート杭の鉄筋かご無溶接工法
    設計・施工のガイドライン(第二版)
  • 4)日本道路協会:杭基礎施工便覧

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