令和の時代の新しい安全対策 建設業界で話題の出来事をConCom独自の視点でご紹介

2026/05/01

第2回 事故は突然起こる、原因に人の問題あり

事故は突然起こる

現場で働く作業員の皆さんは、事故防止に不可欠な用心深さを養うため、“事故は突然起こる”ことを深く胸に刻む必要があります。誰も事故が起きるとは思っていない。しかし事故は突然起こります。そして多くの場合、「なぜこれをしなかったのか」「なぜこれをしてしまったのか」と、後悔の言葉がきかれます。しかしいくら後悔しても、その事故が起きる前に時間を戻すことはできません。

廃油精製施設の大爆発

以前、廃油精製施設で大爆発が起こり、周辺住民に甚大な被害をもたらしました。爆発事故は、大なり小なり同じメカニズムで全国の廃棄物処理施設で繰り返し起きています。メカニズムはこうです。廃油精製は汚い油をきれいにします。ここで厄介なのが不純物です。揮発性の高い不純物が入っていれば、加熱工程で揮発濃度が高まり、着火して爆発を招くリスクが高まります。廃油というのは汚い油。当然、何が入っているかわかりません。爆発を招きやすい不純物が混ざっていることも十分に考えられます。それにも関わらず、それに気づかず加熱して爆発を起こしてしまう。なぜ不純物が十分に管理できなかったのでしょうか。

重油タンカーの爆発事故

過去に発生した重油タンカーの爆発事故も「なぜこれをしてしまったのか」というものです。重油タンカーは、タンクの中に重油が満タンの時よりも、空っぽの時の方が危ないのです。その事故も、港に着き重油をおろしたタンカーのタンクの中は空っぽ。そうすると、タンクのへりにへばりついている重油が気化して、空っぽのタンクの中の酸素と混ざり合い、爆発しやすい状態に陥ってしまいます。このような状況では、甲板上での作業は厳禁と定められています。それにもかかわらず、甲板上で作業をして着火を招き爆発事故が起きました。なぜそこで作業をしたのでしょうか。

トンネル工事のメタンガス爆発

建設現場をみても、過去にトンネル工事でメタンガスの爆発事故がありました。冬季、数か月の工事休止期間中、トンネル内にメタンガスがじわじわ溜まり、春になり工事再開に向けての準備中、爆発事故が起きました。メタンガスは無色透明、無臭です。見えない、臭わないためとても厄介です。そのことを十分わかっているはずなのに、トンネルに入る前、なぜその濃度を測定しなかったのでしょうか。

昨年、下水道で硫化水素中毒が2件、7名の死亡災害発生

昨年3月には下水道維持修繕作業において、硫化水素中毒により、秋田で3人が亡くなり、8月にも埼玉で4人が亡くなる痛ましい死亡災害が繰り返されました。下水道の中には汚物があり、汚物があれば硫化水素発生の危険は十分あるのにと悔やまれます。

このように近年の事故は、大事故であっても「なぜこれをしなかったのか」「なぜこれをしてしまったのか」と悔やむものばかりです。これらはまさに人の問題です。

30数年前に始まった建設業のヒューマンエラー研究

私は大学卒業後、総合建設会社に勤務し、国内外の建設現場の施工管理業務等に従事し、20数年勤務した後、労働者の安全と健康を確保するための研究を行う労働安全衛生総合研究所に移りました。

ヒューマンエラーとの出会いは、今から30数年前、国土交通省所管の一般財団法人建設経済研究所に社外出向しており、そこで建設業行政施策立案のための基礎資料づくりに携わったことでした。

当時、国土交通省は、建設業の総合的な安全確保について、『これからの建設業の安全対策は、規制を中心とした基本的な安全対策は堅持しつつも、関係者一人が決められたことを義務的に行うだけでなく、自ら進んで安全対策に取り組む「自立的な安全対策」を進めるような方向が求められる。それを推進するには、誘導的な施策や環境整備が必要となるが、特に労働災害の発生に深く介在しているにも関わらず、今まで建設業ではあまり検討されてこなかったヒューマンエラーの研究が早急に必要である』と方向性を示しました。それを受け、ヒューマンエラーの研究がスタートしました。当時、ヒューマンエラーは、電力産業、航空産業、運輸業等、事故が発生すると、周辺住民や乗客などを巻き込み大惨事につながるおそれがある産業では精力的に研究が行われていましたが、建設業では馴染みが薄いものでした。

あれから30数年経ち、今では、大手・中堅建設会社を中心に建設現場のヒューマンエラー災害防止の取り組みが進められています。

(著)東京都市大学客員教授/事故防止研究所代表
高木元也

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