「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。
2026/05/01
皆さんがイメージする大学教員の仕事はどんなものだろうか?大方、「大学の先生なんて、学生に授業の講義をして、研究室でゼミや研究指導はしてるものの、春夏冬休みが学生と同じ位長期間あっていいな~」という感じではないだろうか?いやいや・・。教員のはしくれである筆者の実感として、あるいは知る限り、「今やそんなゆとりある勤務実態の大学教員は、ほとんどいないはず」というものである。
では他に何の仕事をしているのか?自分でも不思議な位である。一つには高大連携(高校と大学との連携)強化の名の元に、高校や中学まで行って出張講義や模擬授業を行う。オープンキャンパス、大学訪問の高校生等を迎え入れる。各種の入試準備とその実施、面接官、監督責任者、補助員などの業務。研究室管理業務、出張旅費や研究費の清算、授業準備のための事務、学務、教務・・。数え上げればきりがない。
大学教員は、その働き方の特殊性を考慮し研究活動を主体とする業務を「裁量労働制」の対象として認められている。このため大学教員の多くは良くも悪くも裁量労働制の労使協定の元働いているが、裁量労働制の根幹となる研究活動主体という概念は極めて薄まり、入試対応などありとあらゆる業務が組み込まれているように感じる。悪い言い方をすれば、教員は、大学側に使われれば使われるほど単価が下げられるのである。
さらに、よく言われる学生ファースト。その意味は分かるが、これがイコール教員ラストと聞こえる。根本的な企業の成長のために行き過ぎた顧客ファーストから従業員を重視する働き方改革を志向し、今や従業員ファーストとすら叫ばれている現在の一般労働環境とは無縁の隔絶された教員という世界。民間企業の経験も長くある筆者にはある意味、時代に逆行しているようにも思える教員個人への業務依存度の高さを実感している。
本来、教員の仕事とは何であろうか?
これは転職組の自分が他の教員の方々並みに仕事が出来ないために感じることなのだろうか?
教員1人あたりの学生数の推移を図-11)に示す。国立大学では教員1人に対して学生10人程度、私立大学では同20人程度の面倒を見ている。筆者は私立大学に勤める教員であるが、現在、研究室に4年生が約15名在籍している。筆者の感覚では双方向のコミュニケーションをしっかりととれる人員は教員1人に10人程度ではないかという感覚であるがどうであろうか。国立大学が1人で双方向コミュニケーションを適切にとれるギリギリ位の感じに思える。図-1の統計は文理合わせた統計なので理系と文系とで感覚の相違はあろうかと思うが、いずれ教員1人あたりの学生数は多く感じる。
では大学教員を増やすことで、より適切な教育ができないか?図-22)は18歳人口と大学進学者数の推移予測である。18歳人口が減少し続ける中でも、大学進学率は上昇し、大学進学者数は増加傾向にあったが、2026年以降は18歳人口の減少に伴い、大学進学率が上昇しても大学進学者数は減少局面に突入すると予想されている。大学学部学科数が変わらず、教員数が変わらなければ、必然的に教員一人あたりの学生数は減少していくことになるが、当然そんな話にはならずに、大学の淘汰が進むと考えるのが普通であろう
図-33)は定員割れの私立大学数の推移である。2023年データで50%以上の私立大学が定員割れを起こしており、さらに入学者数が定員の70%未満の私立大学が10%程度ある。教員の負荷が大きいから、教員数を増やして欲しい等とは簡単に言える状況でないことは一目瞭然である。
さらに大学としての外部環境から目を移して土木工学科を取り巻く状況はどうであろうか?受験生の学部学科の志望分野は様々に変化していくが、株式会社リクルートが発行している「カレッジマネジメント」4)では、土木工学科は志願者数も募集定員数も減少する撤退期にあるとされている。しかし、2012年から2016年は志願者数が増加、2016年から2018年にかけて募集定員数が微増、2021年は2018年から募集定員も志願者数も微減という感じであり、下げ止まり感はでてきているように思える。
土木・建築の学生数に関する見通しについては、日本機械土工協会からの問いに対する文部科学省の回答として「学校基本調査によると、平成23年度(2011)から令和2年度(2020)の10年間で、大学の土木建築工学分野の学科の学生数は約2,900人、高等専門学校の土木建築工学科などの学科で学ぶ学生数は約1,700人減少しています。」との見解が示されており、土木系学生数の減少という厳しい状況は今後も変わらないと思える。参考に図-45)に2015年度を100とした場合の2020年度までの生徒数の比率を示す。
土木工学を学べる大学・短期大学はリクルート社の調査によれば95校あるが、土木工学の名前を残している大学は15校程度で15.8%しかない。土木工学という名前も含めて、学科の人気はやはり無いのであろうか?
土木工学科を志望している高校生と話をすると、彼らは災害復旧、ダムや橋梁といった巨大構造物を造る事、環境配慮型材料の開発など、土木工学に対するモチベーションを語ってくれる。災害の激甚化や多発化により土木による災害復旧、復興の価値等が学生にも伝わっているように思える。3K(きつい汚い危険)、談合などの悪いイメージは薄まっているようにも感じる。
研究室の学生とは色々な話をするが、研究テーマを選ばせると、筆者なら選ばないような(笑)環境配慮型材料の開発に関するテーマの人気が高い。筆者からは宇宙関係の研究テーマも挙げてみるが、学生曰く、今使えないし、企業に評価してもらえないので希望しないとのこと。放射性廃棄物処分のようなテーマについて、現世代の責務責任を果たしていこうと誘ってみるがこれも学生には響かない。筆者からすると、キャッチーなところに乗らず、責務責任みたいな堅さでもない、結局、今は防災と環境という現実主義で、夢を見ないと感じさせられる。何か物足りない、学生と夢を見たい・・
前述のとおり、今の土木の学生は総じて現実主義で高い夢を見ないと感じる。その現実は防災や環境負荷低減の志向に現れているように思われるが、これだけではどうであろう。プラスアルファの現実と思える夢を見させてあげなければいけないと思う。学生と話をしていて思うのは、家業を継ぐ学生は圧倒的にモチベーションが高いということだ。目的意識があり自分事になっているからと思うが、結局は身近な現実で土木の楽しさを知っているからだと思う。
土木のイメージは回復基調にあると感じている。大手ゼネコンのテレビCM等がイメージアップに貢献したのは言うまでもないであろう。これからは、より具体で身近な土木の仕事そのものを学生に見せて、自分事と感じさせて行くことが、持続可能な土木の道に思える。
業界の皆さんプロジェクトXにいっぱい出演してください。コンサルさん、もっと情報発信をお願いします。
土木の楽しさをいっぱい伝えるのが、それで飯を食べている我々の責務と感じる今日この頃です。
雑駁な文章をご容赦ください。
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