令和の時代の新しい安全対策 建設業界で話題の出来事をConCom独自の視点でご紹介

2026/10/01

第6回 しかし今、死傷災害は下げ止まり

建設業の死亡災害は、長期的には大きく減少してきましたが、平成の後半だけに目を向けると、平成23年以降、死傷災害(休業4日以上)は下げ止まり傾向が顕著に見受けられます。

「新しいやり方」が必要

“下げ止まり”ということは、これまでのやり方だけではダメで、新しいやり方を打ち出さなければならないことを明確に物語っています。

これまでのやり方とはどのようなものか。一言で言えば、現場の安全管理者のリーダーシップの下、指示・指導などにより現場の安全活動を進めたことです。

これに対し、「新しいやり方」 とは、現場で働く者一人ひとりに、“人間のたよりなさ”を理解させ、自ら被災しないよう慎重な行動に努めさせることではないかと考えます。

なぜだと思いますか? それは、人間は、時に忍び寄る危険に気づかなかったり、自らの行動が止められなかったり、焦ったり、イライラしたりして被災してしまうからです。自分の身を自分で守れなくなることがあるのです。

今、低い所からの転落、転倒による重傷が後を絶たない

最近の労働災害の特徴として、本人が「被災するかもしれない」と作業に潜む危険を意識し、慎重に行動していれば防げたと思われるものが数多く見受けられます。

具体的な災害事例をみていきます。

低い所からうまく飛び降りられず重傷。甘く見てはいけない

【災害事例】

高さ1.2mの足場の上から、腰を下ろしながら飛び降りたが、バランスを崩し床に膝を強く打ちつけ靱帯損傷。

あわてたのか? すべるこわさを感じなかったのか?

【災害事例】

トラックから地面に降りる際、敷鉄板上の泥で足を滑らせ、左足大腿骨を骨折した。

このような災害を防ぐためには、自ら被災しないように、慎重な行動をとるように努めなければなりません。

災害防止には、たよりなさを自覚すること

低い所からの転落、転倒災害を防止するには、転落、転倒しないよう、本人が気をつけなければなりません。

しかし人間は、実に頼りない生き物で、うっかり、ぼんやり被災しています。

それどころか、自分の力すら常に100%発揮できません。なんとなく気分が乗らず、力が発揮できないこともあります。そうですよね。

現代人は、原始人とほぼ変わらない。いつもうまくいくわけがない

人間工学の専門家が言います。「現代人の身体は原始人とほぼ変わらない。しかし現代人は、産業革命以降、工業化、機械化の波の中を生き抜かなければならず、うまくいかないことも当然でてくる」と。

人間は、人間をよくわかっていない

多くの人は「人間のことはよくわかっている」と言います。しかし実際はよくわかっていません。自分のことは過大評価しがちです。急な忙しさ、トラブルなどの変化に弱く、行動は感情にも左右されます。

高い集中力は、長く続かない

人間は、高い集中力があれば、エラーを極めて少なくできます。しかし、それは長く続きません。慣れ、あわて、あせりなど、自分が原因でエラーが起こります。

人間はエラーをすることを十分に理解する

令和6年1月2日、羽田空港で、管制官と、待機中の飛行機の機長とのやり取りがうまくいかず、進入してはならない滑走路に進入し、そこに着陸してきた飛行機と衝突する大事故が発生しました。ヒューマンエラー対策が進んでいる航空業界でこのような事故が起き、関係者のショックは計り知れません。

この大事故から、改めて「人間はエラーする」ことを教訓にしなければなりません。

(著)東京都市大学客員教授/事故防止研究所代表
高木元也

新着記事

令和の時代の新しい安全対策

2026/10/01
第6回 しかし今、死傷災害は下げ止まり

現場の失敗と対策

2026/10/01
コンクリート工事 4)打設準備(型枠・鉄筋組立・その他) コンクリートの温度ひび割れ照査の失敗

コラム

2026/10/01
コーン指数をどう読むか ―コーン貫入試験の使い分けと留意点―

トピックス

2026/10/01

建設業担い手確保の新しい試み~『第5回コンストラクション甲子園 北海道大会』

高齢化が進む建設業界において、若年層の入職者を増やすことは、将来の国土の安心と安全を確保するための喫緊の課題といわれています...

今月の一冊

2026/10/01

『この一冊で技術者不足を乗り切る 建設事務スタッフ育成マニュアル』

人手不足に悩む建設業において、書類作成や写真整理といった建設技術者の抱えている業務を本社や支店の事務スタッフが代行...