現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

2026/05/01

緻密な工程管理で想定外の変更にも対応。
DXフル活用で、局長表彰と関東インフラDX大賞をW受賞。

回の現場探訪(表彰工事)は、令和6年度 国土交通省 関東地方整備局局長表彰と関東インフラDX大賞をダブルで受賞した「R5国道20号八王子南BP館地区改良その22工事」です。この工事の監理技術者を務めた、中部土木 株式会社(本社/愛知県名古屋市)の青木昌義さんに、工事の概要と工夫された点、特に3次元モデルを活用して設計変更を提案した経緯、DXの活用が現場にもたらすメリット等についてお聞きしました。

【工事概要】
工事概要 地盤改良工、擁壁工、カルバート工 他
工期 令和6年4月1日~令和7年3月31日
発注者 国土交通省 関東地方整備局 相武国道事務所
受注者 中部土木 株式会社
施工場所 東京都八王子市館町地先
請負金額 400,697,000円(税込)
監理技術者 青木 昌義

Q 今回の工事の概要(目的)について簡単にご説明ください。

国道20号八王子南バイパスは、東京都八王子市内を東西方向に結ぶ約9.6kmのバイパス道路として、交通渋滞の緩和・交通の安全性向上・移動利便性の改善・圏央道アクセス強化などを通じて、地域全体の交通体系と生活環境を改善するためのインフラ整備事業です。当工事では、八王子市館町地区内において、工事区間260mの施工を実施しました。

◎【国道20号八王子南バイパス工事概要】(国土交通省 関東地方整備局 相武国道事務)
https://www.ktr.mlit.go.jp/sobu/sobu_index025.html

Q 地盤改良工だけでなく、同時に複数の構造物工事を行ったそうですが、同時施工の工程管理を行う上でどんな工夫をされましたか? また、工程管理で苦労した点は?

工程管理をする上で、まず大きく三工区に分類しました。また、計画段階から複数の工事を同時に進行することがわかっていましたので、工程表は最初から「デイリー(日めくり工程)」で作成し、天候不良等で調整が必要になった際には、その都度、協力会社と週間工程、日々の作業調整を実施しました。安全管理面でも、極力、2班体制にとどめて、目の届く安全管理を意識しながら工事を行いました。天候の変化への対応は、複数の気象アプリやサービスを活用して、総合的に判断するようにしました。

国土交通省発注のバイパス関連工事との工事用道路の調整や、工事内容に河川改修が含まれており、八王子市が発注する河川関連工事との調整もあり大変でした。

図1)工事概要平面図 図1)工事概要平面図

Q 発注者に計画変更を提案したそうですが、どのような提案をされたのですか?

受注後の社内会議で、調整池を当初計画通りに施工すると、今回施工する階段工の施工ヤードに影響がでる可能性が高いと判断し、流量を賄えることを前提に、調整池の形状変更を発注者に提案し、認めてもらいました。この形状変更により他工事への影響もなく進められたと思います。

図2)当初計画(左)と提案した調整池の形状(右) 図2)当初計画(左)と提案した調整池の形状(右)

Q 工事全体にDXを取り入れることで、どのようなメリットを感じていますか?特に時短という点でのメリットはどれくらいありますか?

建設業の就業者数は年々減少傾向にあり、また高齢化も進んでいます。さらには時間外労働の上限規制の課題がある中で、各施工過程において積極的にDXを取り入れることは、省力・省人化を実現できますし、結果として休日の確保・残業時間の縮減につながると思います。当該工事も「週休二日制適用工事」でしたが、無事に達成することができました。

写真1)3次元モデルを出来形管理に活用 写真1)3次元モデルを出来形管理に活用

DX導入の具体的なメリットとしては、例えば出来形測定は、これまで複数人で巻尺等を使用し何日もかけて実施していましたが、詳細に計測したつもりでも、見落としや測定ミスなどが発生してしまい再計測などが起きていました。しかし、DX技術(3次元モデル・BIM/CIM)などで施工前に可視化することにより図面の照査がスピーディかつ正確に行うことができます。また、DXに慣れると、若年技術者でも熟練技術者と差のない出来形管理ができるようになり、ミスも少なくなります。さらに、3次元モデルで可視化することにより、個人の頭の中での完成形をイメージしながら打ち合わせをするのではなく、協力会社の作業員も含め、工事に携わる全員が状況を理解しやすくなるメリットがあります。

写真2)3次元モデルによる作業確認 写真2)3次元モデルによる作業確認

Q 鉄筋の3次元モデル化を実施したことで、どのようなメリットがありましたか?

写真3)3次元モデルによる不具合の早期発見 写真3)3次元モデルによる不具合の早期発見

鉄筋の配筋図面は、断面ごとに複数に分かれており鉄筋同士の干渉やかぶり不足など、2次元の図面では把握が難しいことが多く、施工中に現場不一致や支障箇所などに気付くこともありました。経験の豊富な技術者であれば、こうした課題にいち早く気づき、手戻りを最小限で留めることもできますが、経験の浅い技術者にとっては、完成形をイメージするのが難しいこともあります。しかし、3次元モデルで視覚化すると、さまざまな方向から詳細を確認することができ、課題を早期発見することができます。
今回の工事でも、「逆T擁壁」と「階段工」の施工において、鉄筋の3次元モデル化を実施し、これまで把握しづらかった配筋の干渉や納まりを、施工前に視覚的に確認することができました。

本工事では、鉄筋干渉チェック機能を利用して不具合を事前に確認しましが、一方で、鉄筋の本数不足や配置の抜けといった部分については、自動的に検出する機能がなく、CADオペレーターによる目視確認を行っています。
そのため、モデル作成および確認に要する期間は、従来の図面を見比べながら不具合を確認する方法と大きくは変わらず、CAD上での鉄筋組立に約2日、目視確認に約1日を必要でした。
ただし、3次元モデルを用いることで、鉄筋の配置状況を多方向から直感的に把握できるようになり、干渉だけでなく、不足や抜けについても視覚的に気づきやすくなりました。
特に「逆T擁壁」や「階段工」のような複雑な構造では、完成形のイメージも共有がしやすく、施工前段階でのイメージの共有にも有効でした。
今回、鉄筋材料の数量確定と発注時期が重要なポイントであり、鉄筋の3次元モデル化を実施したことにより遅延することなく予定通りに進めることができました。
このように、作業時間自体は大きく変わらないものの、受発注者での事前イメージの共有や手戻りの防止や施工品質の向上といった面で、3次元モデルの活用は有効であると感じています。

Q 中部土木さんがDXを推進するにあたり、これまでどのようなご苦労がありましたか?

中部土木は全社をあげて建設ICTを先進的に取り組んできました。DXが社内で飛躍的に推進されたきっかけは、やはり10年前に施工管理室(現在:DX推進部及び業務効率推進部)が設立されたことだと思います。建設ディレクターが中心となりDXやICTを含めた現場バックアップを担ってくれています。私自身も、当初はDX技術を活用した施工経験が浅く、当初は慣れるまでに苦労しました。どうしても「従来のやり方で問題なくできる」との先入観があり、中々DXを使うのに抵抗がありましたが、DX推進部が、これまでの経験を活かし、建設ディレクターを中心に現場をサポートしてくれましたので、少しずつではありますが、DX推進に取り組むことができています。また、現場の効率化にも貢献してくれていますので、現場サイドの負担もかなり軽減されています。

写真4)現場を支援するDX推進部 写真4)現場を支援するDX推進部

Q 当該工事では「建設ディレクター」を活用されましたが、具体的に移管した業務は何ですか?またそれによって青木さんの負荷がどれくらい減少し、その時間をどのように有効活用できました?

現場施工に伴う、施工計画書・施工体制台帳・打合せ資料・出来形管理・品質管理・検査書類等の書類全般のサポートをしてもらいました。建設ディレクターは複数の工事を担当し、業務の内容に合わせて作業所での支援と本社からの遠隔対応をしています。遠隔対応の場合はメールや電話でのやりとりではなく、Webでリアルタイム接続し、対面に近い形でサポートを行っています。Web接続だと、より具体的かつ詳細な指示ができるだけでなく、意思疎通も上手く図れると思います。今回の工事でも、書類業務量の全体の約50%をサポートしてもらったことで、月の残業時間も約半分の20時間程度削減することができました。減った時間は、工程管理・原価管理、次工程の問題点などを早期に検討する時間に割り当てることができ、さらに自身のワークライフバランスも改善されたと思っています。

写真5)Webによる建設ディレクターとの業務確認 写真5)Webによる建設ディレクターとの業務確認

Q その他、今回の工事で活用したデジタル機器はありますか?

写真6)デジタルサイネージを活用した熱中症対策 写真6)デジタルサイネージを活用した熱中症対策

現場の熱中症対策として気温・湿度・WBGT(暑さ指数)をリアルタイムで表示する「デザタルサイネージ(電子表示機器)」を設置しました。週間工程表の掲示やお知らせ等の情報共有にも活用し、作業員との作業内容の確認にも役立てました。

安全管理面では、玉掛の際に「玉掛警報器」を使用し、周辺で作業する作業員に警告音で知らせ、吊荷の落下災害や挟まれ防止を抑止しました。また、バックホウの後方確認を確実に行うことを目的に、「バックモニター搭載型」のバックホウを使用しました。これによって運転席から視線を大きく動かすことなく、安全確認が行えました。

写真7)バックモニターによる後方確認 写真7)バックモニターによる後方確認

Q 青木さんが日頃、現場の責任者として心がけていることは?

現場を進めていく上で、大小様々な問題が発生しますが、どのような状況においても、焦らずひとつひとつ確実に対応・実施して行くことが大切だと思っています。また、快適な職場環境を実現するためには、常に安全意識を持ち、無事故・無災害で工事を完成させることを常に心がけています。

Q これから監理技術者をめざす若い技術者にアドバイスをお願いします。

現場は一人で行うものではありません。困難な壁に直面しても、発注者や会社の上司、同僚や協力会社の方々が必ずバックアップしてくれます。行き詰まってしまう前に自分の考えていることを相談しながら、今できる最善な進め方で、現場を進めてください。成功も失敗も、積み重ねた経験が、将来必ずあなたの自信に繋がるはずです。

写真8)青木さん 写真8)青木さん

私自身も、第一線での自然と向き合いながらのモノづくりだけでなく、バックオフィスでのサポート、若手入職者への技術力の継承、そして新しい技術を取り入れた安全で働きやすい環境整備に取り組んでいかなければならないと思っています。

おわりに

着工前からすでにデイリーの工程表を作成していたということに驚きました。当然、天候や計画変更によって、工程表もその都度、再検討する必要があったと思いますが、常に先手管理で工程を見直していたそうです。現場の作業員のみなさんも、急な変更ではなく、早めに作業変更を知らされることで、とてもやりやすかったと思います。また、現在40代の青木さんは、どちらかといえば「平面図」から構造物をイメージすることを学んだ世代で、当初はデジタル技術の活用に疑問を抱いた時期もあったそうですが、デジタル技術に抵抗感の少ない若手技術者に聞くことで、自分自身も慣れていったそうです。そうした姿勢が、若手技術者からの信頼にもつながっているのではと思いました。

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