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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

コンクリート工事打設準備(型枠・鉄筋組立等)

橋梁の断面修復工事で品質トラブル
-はつり作業で母材に微少なひびわれ発生-

2015/09/29

工事の概要とトラブルの内容

図1 床版下面の部分断面修復工図1 床版下面の部分断面修復工

道高架橋の補修工事において発生したトラブルである。梁および床版コンクリートの中性化が進み部分的に鉄筋の発錆が認められたため、延命化ならびにはく落対策として部分断面修復工法による補修が行なわれた。

施工手順は、まず油圧ピックハンマで鉄筋の背面1~2cm程度までをはつり出して、人力で鉄筋をケレンした後、圧搾空気にて吹付け面を清浄にし、その後ポリマーセメントモルタルを用いた湿式吹付け工法によりはつり箇所を断面修復した(図1)。断面修復の施工面積は延べ約30m2、1箇所当りの補修面積は1.0~3.0m2程度である。

吹付けモルタル硬化後、打音検査により付着状態を確認したところ、補修面積の2割程度で濁音が認められた。このため、コア抜き(φ50mm)により試料を採取し打継部の状態を確認したところ、打継部近傍で微少なひびわれが目視にて確認された。さらに詳細なデータを得るため、浸透性の蛍光エポキシ樹脂をコアに含浸させ観察したところ、ひびわれは母材コンクリート側の粗骨材の界面部分が剥離したものであることが判った(写真1)。他方、吹付けモルタルと母材コンクリートとの付着については、良好な状態であることが確認された。

写真1 蛍光エポキシ含浸によるコア観察
写真1 蛍光エポキシ含浸によるコア観察
*左の写真はハツリ後の切断面。右の写真は同じ切断面の蛍光エポキシ含浸時の写真で、白色部分は
骨材周辺の微細ひびわれ。赤線は母材コンクリートと吹付けモルタルの境界面を加筆している。

原因と対処方法

詳細調査の結果、ひびわれが母材コンクリートの粗骨材界面で発生していることから、原因は11kg級油圧ピックハンマによる過剰な振動にあったと判断した。断面修復工事においては、はつり作業による母材コンクリートへのダメージを極力少なくすることが肝心である。本事例は、現場においてこの認識不足が招いたトラブルといえる。

改善策として、はつり機器等の選定、またその組合せ方法について種々試験した結果、はつり作業ならびにはつり面の仕上げ方法について、下記の手法の組合せで付着不良の発生を防止することができた。

①はつり作業にはより打撃力の少ない5~7kg級の油圧ピックハンマを用い、仕上げはつり(2cm程度)として低打撃力の2~3kg級のエアーチッパを用いる。

②はつり作業後は、吐出圧20MPa程度の高圧洗浄機にて脆弱部除去、洗浄を行なう。
なお、本工事で発生した付着不良個所は、上記の方法にて再施工した。また、高圧洗浄機については、吐出圧50MPa程度の高性能のものも市販されてきており、浮きの生じている母材をより効率的に除去できることも確認している。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

通常、断面修復工の付着性能、ひびわれ抵抗性能などの品質は、発注者が定める認定試験で評価される。しかし、認定試験は、吹付け工法、吹付け材料の性能を確認することに主眼が置かれ、指定された同一の下地処理条件下(例えば、ブラスト処理された試験板など)で実施される。このため、現場の施工状況が必ずしも反映されているとは言えない。

本事例は、母材コンクリート内部の微少なひびわれといった認定試験では想定されない要因により発生したトラブルである。また、同じようなトラブルは吹付けモルタルの養生方法、吹付け作業員の技量の良し悪しによっても発生する。このため、断面修復工事においては、認定試験の結果とともに、現場の施工条件を反映した性能確認試験を施工に先立って実施しておくべきと言える。

一方、全断面修復工事など施工規模の大きい工事では、近年ウォータージェット工法(吐出圧150~300MPa程度)によりはつり作業を行なうケースも多くなっている。ウォータージェット工法は、母材コンクリートを傷めず、適度な粗面を形成できるため付着性能も向上する。さらに、最近はポンプ能力の向上やノズルシステムの改善により作業効率も高くなっている。経済性では若干劣る点もあるが、ある程度の施工規模を有する場合には工法検討に加えて良いと思う。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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