土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
コンクリート工事
4)打設準備(型枠・鉄筋組立・その他)
2024/04/01
モルタルのペースト分が漏れた原因は、①ハンチ型枠の押えが甘く、打ち込んだコンクリートの圧力により、ハンチ型枠の裾が開いてしまったこと、②ハンチ型枠を固定するセパレータの溶接の向きが悪く(図-4)、コンクリートの打込みにより型枠が開いたこと、③底版コンクリートの均しが平滑でなく、ハンチ型枠との間にすき間ができてしまったこと、④コンクリートの打込み時に、ハンチ部にバイブレータが届かないため、必要以上にバイブレータをかけ過ぎたことでコンクリートが分離し、ペーストが漏れやすくなったこと、⑤コンクリートの硬化が始まった段階で、ハンチ部表面に気泡が残らないように木づちでハンチ型枠をたたいたことで、ペーストが漏れ、ハンチ部表面に豆板が発生したことなどが考えられた。
これらは大きく型枠設置の問題(①~③)とコンクリート打込みの問題(④、⑤)に大別されるが、コンクリート打込みの問題は作業員への教育で対応できるので、型枠設置の問題について対策を検討した。
図-5に示すように、①ハンチ部の型枠を抑えるセパレータを柱などの鉄筋に溶接するに当たり、向きや長さがバラバラになることは否めない。次に②コンクリートを打ち込むと、壁の中央からハンチ部に流れるが、この移動の向きはハンチ型枠の面全体に直角に作用するわけではなく、③ハンチ型枠の端部を持ち上げる方向に作用する。このことで生コンクリートのペースト分が漏れてしまったと考えた。
反省会で、型枠大工より「押え金具」を揃えてほしいと提案があり、調べたところ近くの地下貯水池の現場の「押え金具」が空いていることを知り、譲り受けた。以後、「押え金具」を使用することにより、ハンチ部のペーストの漏れはほとんど無くなった。図-6に押え金具の使用例、図-7に押え金具のイメージ図を示す。写真-1は押え金具を使用している状況である。
押え金具は□60×60mmの鋼管を加工したモノである。地下貯水池やボックスカルバートなどハンチが多い工事では、工事が始まった段階で新たに製作しておくと良い。建材屋のカタログにも、ハンチ寸法250×250~1000×1000mmまで金物を組み合わせることで使用可能なリース材が掲載されているが、図-7に示すような一体のモノの方が良い。 一方で底版コンクリートとハンチ型枠によって構成された空間には生コンの粗骨材が入らないことは明白であり、「均一なコンクリート」という観点からすると弱点である。そこで、図-8、写真-2に示すように底版コンクリートと壁のハンチ部を一体で打ち込むことも検討すると良い。壁②(図-8)の外部拘束力が弱まりひび割れ抑制効果が期待できる場合もある。
ただし、浮き型枠を使用するには以下のデメリットがあることを理解しておく必要がある
①浮き型枠を設置するため、底版コンクリートの打込みまでの工程が長くなる。
②ハンチ型枠の組立精度が悪くなる。
③底版部のコンクリートがある程度硬化するまでハンチ部のコンクリートを打ち込めないため、コンクリートの打込み時間が長くなる。このため、冬季のコンクリート打込みには向かない。
④ハンチ型枠端部からのコンクリート盛り上がりに対し、コンクリートがフレッシュなうちでの修正が困難。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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